セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
セリエA得点王をかけた3人の戦い。
新星、大ベテラン、そして野生児。
posted2014/05/14 11:30
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph by
AFLO
18日の最終節を残すばかりとなったセリエAで、トリノのFWチロ・インモービレが、得点王レースの先頭に立っている。
24歳の新星は、ゴールエリアの中でも外でもとにかく動く。相手DFへプレスをかけ、撹乱し、手繰り寄せたチャンスを仕留める。PKを蹴ることなく、22ゴールを積み上げた。
理想とするFWは、ルーニー(マンチェスターU)だという。
「彼はゴールエリアの中より外でプレーすることが多い。なのに、プレー位置に関係なく得点を挙げるから」
インモービレは、もともとユベントス育成部門の有望株だった。名将ゼーマンの薫陶を受けたペスカーラ時代にゴールセンスを覚醒させ、セリエB得点王を獲得した。
ただし、セリエAの壁は高かった。
2部得点王の肩書きを引っさげ、ジェノアでプレーした昨シーズンのゴール数はわずか5に留まった。
シーズン後のU-21欧州選手権に名誉挽回を期して挑んだが、決勝戦でスペインに敗れ、タイトルを逃した。籍だけは入れていた妻ジェッシカとの挙式披露宴を延期してまで臨んだだけに、失望は余計大きかった。嫁もむくれた。
ベントゥーラの指導で冷静さと自信を回復。
「当たりのないシーズンを2年も続けるようだったら、本物のFWとはいえない」
新天地トリノで仕切り直しを誓ったインモービレは、老練の指導者ベントゥーラの信頼を勝ち取り、FWチェルチという極上のチャンスメーカーを得たことで、ゴール前の冷静さとシュートへの自信を取り戻した。
29節リボルノ戦では、1部に上がって初めてのハットトリックを達成。パルマとのEL出場権をかけた37節の直接対決でも、きっちり1ゴールを上積みした。