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“カオス”を生み出す超攻撃的3-4-3。
湘南が挑む、目が離せないサッカー。
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph byShonan Bellmare
posted2014/05/09 10:40
12節終了時点で、34得点5失点。全く他を寄せ付けない強さを発揮するチームは、同時にまだまだ伸びしろのある若いチームでもある。チームとしても、選手個々としても、そのキャリアは決して今がピークではない。
3バックの両サイドが、攻撃において担う役割。
2014年モデルの3バックは、左から三竿雄斗、丸山祐市、遠藤航の並びをファーストチョイスとする。左サイドの鋭い槍となっている三竿は、激しい上下動で決定機へつながるクロスを量産している。
遠藤も負けてはいない。アウトサイドの選手を追い越してアタッキングサードへ侵入し、ボールを持ち出した勢いのままペナルティエリア内へ飛び込む。U-22日本代表候補の21歳は、ここまでチーム2位タイの4ゴールをマークしているのだ。
三竿と遠藤の最終ライン両サイドが、同時にアタッキングサードへ侵入する場面も少なくない。背番号17のクロスが逆サイドへ流れ、背番号3が再びクロスを入れるシーンが珍しくないのだ。両サイドが飛び出している局面では、セントラルMFの菊地俊介か永木亮太が丸山とともに守備のリスク管理に目を光らせる。とはいえ、それも対処法のひとつに過ぎない。
「我々は1対1のトレーニングで、攻撃の選手が守備の練習もします。もちろんその逆も。3バックの選手は、ペナルティボックスの近くで攻撃の仕事をしてもらわないといけない。逆に3バックが上がったら、永木や菊地、あるいはアウトサイドの選手、シャドーの2人も3バックのワキを埋めることがある。ウチの3バックが上がっていけば、相手の攻撃の選手はついていかなきゃいけない。それがウチにとって危険かと言ったら……一番リスキーかもしれないけれど、うまくハマれば一番リスクマネジメントができる」
圧倒的な走力で、相手に息継ぎの間を与えない。
サイドからのクロスにノーマルで4人か5人、多ければ6人がペナルティボックスへ飛び込む“湘南スタイル”の進化形は、失ったボールを敵陣で再奪取するアグレッシブなディフェンスにもつながっている。圧倒的な走力を前にした相手は息継ぎさえままならず、ついにはガードを下げてしまう。前半の30分以降に10点、後半の75分以降に9点をあげているのは(12節終了時)、湘南の圧力がJ2で群を抜くからだろう。
スタイルを進化させているのは、システム上の変更だけではない。選手の意識にも理由がある。