セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
本田と長友、交わらなかったふたり。
消極的なダービー、既にW杯モードに。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byREUTERS/AFLO
posted2014/05/07 12:15
セードルフ監督は「(日本人対決を予測するだろう)敵の裏をかきたかった。相手の攻撃を阻むために守備のフォーメーションを修正した」と試合後に語っていたが……。
策士、策に溺れた……マッツァーリ。
長友は戦術マニアの新指揮官から実戦での効果的な動きを叩き込まれ、攻撃力が格段に上がった。無駄走りが減り、仕掛けどころを見極める術を覚えた長友は「(相手エリアでの)一対一には自信がある」と言い切るまでに勝負強さを増した。パスの精度も目を見張るほど向上している。
前半19分、左サイドの最深部へドリブルで切り込み、イタリア代表DFデシーリオを鮮やかにかわすと、ゴール前へ走り込むFWパラシオへ鋭い低空クロスを放った。
ただし、これ以降攻撃の見せ場は限られた。この夜は、カカのマークに忙殺され、後半に爆発することもなかった。試合翌日の『ガゼッタ・デッロ・スポルト』の採点は5点と辛かった。
長友だけでなく、インテルの攻撃にはまったく怖さがなかった。
今シーズンの後半戦、野心的なマッツァーリは「いじりすぎ」と批判されるほど、試合毎に細かく戦術変更をくり返してきた。修正を消化しきれずに今季最終盤を迎え、混乱する選手たちからは余裕が失われているように見える。
ダービーで勝ち点0に終わったことで、ELプレーオフ出場権を得る5位確定にも失敗した。反撃する姿勢も見せずに敗れたチームへ怒り心頭のマッツァーリは、試合後「こんな試合は二度と見たくない」と一喝。「ダービーマッチには、然るべき試合への入り方がある。残り2試合、選手たちは覚悟して挑め」と猛省を求めた。
セードルフに残された、続投への僅かな希望。
勝ったセードルフにも喜びの色は少ない。
ミランにとって3年ぶりとなるダービーでの白星をもたらしたとはいえ、EL3次予選出場権にあたる6位奪取は、残り2節で連勝しないことには覚束ない。
オーナーからの信頼も揺らぎつつある。
セードルフが今夏以降も続投するためには、6位を確保して欧州カップ戦への道筋をつけることが最低条件だと見られている。
そして、ダービーで用いられた先発オーダーと交代策には、ミランのチーム事情までもが透けて見える。