セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
本田と長友、交わらなかったふたり。
消極的なダービー、既にW杯モードに。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byREUTERS/AFLO
posted2014/05/07 12:15
セードルフ監督は「(日本人対決を予測するだろう)敵の裏をかきたかった。相手の攻撃を阻むために守備のフォーメーションを修正した」と試合後に語っていたが……。
試合後の本田がとった、驚くべき行動!!
先発したMFポーリと後半41分から途中出場したDFアバーテは、ブラジルW杯に挑むイタリア代表招集の当落線上にいる。クラブの利益を考えた場合、W杯に出る代表選手は1人でも多い方がいい。アピールの場を与えるためには、誰かのポジションを空けねばならない。
試合後、本田を起用しなかった理由を問われたオランダ人指揮官は「本田はチームスピリッツを持つ真のプロだ」と断った上で、「彼には出番を与えてきた。今回は誰かがターンオーバーの犠牲にならなくてはならなかった」と述べた。
その本田だが、驚くべき行動に出た。
誰もいなくなった試合後のグラウンドで1人、走り込みを敢行したのだ。
途中出場すら叶わなかった悔しさからか、やり場のなかったエネルギーを発散するためか、汗をにじませて全力で走りこんだ。
ダービーで勝った直後に高負荷の走り込みをしたベンチ選手の話など、これまで聞いたことはない――。
スーパースター待遇の入団会見から4カ月がたち、ブラジルW杯まであと40日を切った。現地のニュースにもならなかった走り込みの真意はわからない。その後、ミランの公式スーツに着替えた本田は、いつものようにミックスゾーンを素通りした。
「彼(本田)とは試合前に少し話をした。試合後はさすがに無理なので、日本に帰ったときに目一杯話をしたい」
黒青のネクタイを締めた長友は、さばさばした表情で敗戦を捉えたが、自らのプレーについては力説した。
「W杯を意識すれば、ああいう(前半19分にパラシオへクロスを通せなかった)場面で、最後の最後にプレーの判断を変えられたり、より精度を高めたりすることが、本当に大事になってくる」
そう言うと、なお自分へ言い聞かせるように「練習します!」と何度もうなずいた。
次のミラノダービー日本人対決は来シーズン。
公式戦として行なわれた最初のミラノダービーは、1909年に遡る。それから200回以上の対戦を経て、初めて実現するはずだったサンシーロでの日本人対決は、来シーズンへ持ち越しとなった。
長友の不完全燃焼と本田のくすぶるエネルギー。
ダービーで交わることのなかった彼らの熱は、発散する場所を求めているはずだ。
スタジアムを深夜に出ると、まるで人気はなかったが、夜風が暖かくなっているのに気づいた。
もうシーズン最終節は近い。そして、W杯も。