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チェルシーとの天王山に敗れても、
国民は「ジェラードの戴冠」を望む! 

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山中忍

山中忍Shinobu Yamanaka

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posted2014/05/04 10:40

チェルシーとの天王山に敗れても、国民は「ジェラードの戴冠」を望む!<Number Web> photograph by AFLO

36節チェルシー戦の前半終了間際に自らのミスで失点し、呆然とするジェラード。

ボランチ転向、二桁得点、そしてリーダーシップ。

 就任2年目のブレンダン・ロジャーズ監督の下、攻撃色が最前面に押し出されているチームは、年始から4カ月近くリーグ戦無敗を続けた。うち5試合は無失点での勝利。零封した相手には、やはり攻撃志向のエバートン、サウサンプトン、トッテナム、そして前線にワールドクラスが揃うマンチェスター・ユナイテッドも含まれていた。なかなかCBコンビが定まらなかった最終ラインの前で、強力な盾となっていたのが中盤の底に座るジェラードだった。

 ベテランMFのボランチ転向成功は、23歳の相棒、ジョーダン・ヘンダーソンが攻撃参加の持ち味を発揮しやすい状況をも作り出した。ボールを奪えば、ジェラードはレンジの広いパス能力でラヒーム・スターリングのスピードやルイス・スアレスの決定力を生かす攻撃の起点となり続けた。

 同時に、自らの得点数もリーグ戦だけで二桁に乗せた。さらにリーダーとしての影響力はそれ以上。ホームでマンチェスター・シティを下し(3-2)、優勝に大きく前進したアンフィールドで、感極まって涙を浮かべ、自分の胸を拳で叩きながらチームメイトを鼓舞していた姿には、リバプールのファンならずとも胸を打たれた。ジェラードの悲願達成を願う国民の思いは、チェルシー戦での残酷な失点を目撃して更に強まったとさえ言える。

 チームに関しても同様だ。24年ぶりのリーグ優勝をかけた連勝が11試合で途絶えても、今季のリバプールに対する感情移入は止まらない。

『ガーディアン』もスポーツ面以外に紙面を割いた。

 もちろん、自力優勝への望みを失う痛恨の敗戦ではあった。その痛みは、昨年8月には夢でしかなかったはずの優勝が、手の届く現実に変わっていただけに強烈でもある。世間の期待の大きさは、高級紙の1つである『ガーディアン』紙でさえ、優勝に王手をかけると思われたチェルシー戦を前に、スポーツ面以外でもページを割いて高揚ムードを煽っていたほど。

 1989年にサポーターの命を奪った『ヒルズボロの悲劇』25周年の今季、「あと3試合全勝なら勝ち点89ポイントで優勝が決まるんだ」という、「運命」を強調するファンのコメントも紹介されていた。

【次ページ】 「プレミアは“ベストチーム”が王者となる」

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