プレミアリーグの時間BACK NUMBER
チェルシーとの天王山に敗れても、
国民は「ジェラードの戴冠」を望む!
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byAFLO
posted2014/05/04 10:40
36節チェルシー戦の前半終了間際に自らのミスで失点し、呆然とするジェラード。
「プレミアは“ベストチーム”が王者となる」
さらにこの敗戦は、チェルシーに「してやられた」という心の痛みも伴った。試合後のロジャーズは、「(ゴール前に)バスを2台も停められた」と発言して、引いてカウンターを狙う敵の消極姿勢を非難したが、その「停め方」は完璧に近かった。
ポゼッションでは73%対27%とリバプールの圧勝。だが、チェルシーDF陣が起死回生のクリアを繰り返したわけではない。単純なタックルの数にしても、リバプールの23に対してチェルシーは19。守備陣の的確なポジショニングが、必死に身を投げる必要性を下げたと解釈できる。リバプールは今季のチェルシー戦で2敗に終わった。
それではチェルシーが優勝に最も相応しいのかというと、そうではない。「一発勝負のCLとは違い、プレミアは“ベストチーム”が王者となる大会だ」と言っていたのは開幕前のモウリーニョ。だが、閉幕まで2週間と迫った今季プレミアで「最高」のチームはと訊かれれば、チェルシーファンの筆者もリバプールの名を挙げる。
リーグ戦31試合出場で30得点のルイス・スアレスは、今季最高のストライカーだ。今回のチェルシー戦では抑えられた印象もあるが、リバプールでは最も得点を予感させた存在だった。チェルシーに追加点が生まれる直前の後半ロスタイム2分、相手GKのセーブに阻まれたが、ボレーで同点に迫ったのもスアレスだった。
ロジャーズの戦術と若手抜擢がチームを甦らせた。
試合当日には、PFA(選手協会)選定の年間最優秀選手賞をスアレスが受賞したことも発表された。チーム得点数ではマンCに抜かれそうだが、スアレスとダニエル・スタリッジによるリーグ得点王争いトップ2コンビは、その呼吸も決定力も今季最高の2トップと呼べる。
チームの中央にはジェラード、アウトサイドには、スターリングと左SBのジョン・フラナガンという、最高レベルの成長度を示したユース上がりの若手がいる。最後尾に控えるシモン・ミノレは、すっかり好セーブが当たり前の守護神に定着しているが実は今季の新顔。長年ゴールを守ったペペ・レイナ(現ナポリ)からのナンバー1交代は、勇断として特筆に値する。
判断を下したロジャーズは、年間最優秀監督の候補最右翼だ。繋いで攻める信念の強さ、システム選択の柔軟さ、そして若手起用の積極さを見せながら、リバプールのスタイル確立と優勝戦線復帰を、予想よりも速いペースで実現してみせた。