欧州CL通信BACK NUMBER
アトレティコがチェルシーを破り決勝へ。
モウ1年目、間に合わなかった「教育」。
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byAFLO
posted2014/05/01 12:15
「何が僕たちに欠けていたのかは分からない。今日は難しい試合だった。来年のためにも、この試合から僕たちは学ばないといけない」とアザールは試合後にコメントしている。
両軍無得点で迎えた、チェルシー対アトレティコ・マドリーのCL準決勝2ndレグ。もっとも、1stレグでのスコアレスドローは、狙い通りに敵地での敗戦を避けたチェルシーに若干有利な結果と理解できた。
そして、チェルシーはホームで先制、2ndレグでも思惑通りに試合を進めると思われた。CBのルイスがボランチに、SBのセサル・アスピリクエタが2列目右サイドに入った、DF6名を含むスタメンからして、守りを固めて敵をじらし、リードを奪った後は更に敵を焦らせて息の根を止める基本プランだったのだから。
しかも、36分に先制ゴールを決めたのはフェルナンド・トーレス。11歳での加入からプロデビュー、そして6シーズンを過ごした「心のクラブ」を相手に奪った得点に喜びは表さなかったが、本人にとっては2カ月ぶりのゴールだった。相手MFマリオ・スアレスの体に当たって入ったシュートは、幸運の印のようでもあった。チェルシーが決勝進出を果たす運命にあるかに思われた。
しかし、アトレティコは10分足らずでアドリアン・ロペスが同点とした。アウェイゴールで精神的な優位を得たアトレティコは、60分にジエゴ・コスタの力強いPKで勝利をほぼ確定。72分にはアルダ・トゥランが、ヘディングがバーを叩いたリバウンドを自ら押し込み、3-1でレアル・マドリーとの「地元対決」が待つ決勝への切符を手に入れた。
「似た者」のアトレティコを讃えたモウリーニョ。
試合後のジョゼ・モウリーニョ監督は、チェルシーとの「カウンター対決」を制し、リーガ・エスパニョーラでも優勝を争うアトレティコの決勝進出を讃えた。
堅守を重んじるスタイルには否定的なイメージがつきまとう。モウリーニョは、前日の会見で「似た者同士」の対戦相手の評価を問われて「アトレティコはカウンター集団ではなく実力集団だ」と答えている。
実際、見事な勝利だった。やや不運な前半の失点後も堅い守りは乱れず、後半にはアウェイゴールにあぐらをかかずに勝負を決めに行く積極性も見せた。開始直後からテクニカルエリアでチームと共に戦っていたディエゴ・シメオネ監督の、大方の予想に反してアドリアンを先発起用した采配も的中した。