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青い空、5機のヘリ、殺風景な埼スタ。
観客のいないスタジアムで考えたこと。 

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近藤篤

近藤篤Atsushi Kondo

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photograph byAtsushi Kondo

posted2014/03/25 10:40

青い空、5機のヘリ、殺風景な埼スタ。観客のいないスタジアムで考えたこと。<Number Web> photograph by Atsushi Kondo

上空をヘリが旋回し、取材陣が見つめる殺風景なスタジアムでJリーグ史上初の無観客試合は行なわれた。春分の日の2日後、朝からとてもよく晴れた、いい天気の日だった。

 ことの発端は、「JAPANESE ONLY」と書かれた1枚の横断幕だった。

 その横断幕は3月8日の浦和レッズ対サガン鳥栖戦の試合前、埼玉スタジアム北ゴール裏、209番ゲートに垂らされた。隣りには日章旗がはられていた。

『日本人だけ』横断幕を貼った当事者が後日説明した(とされる)ところによれば、それは最近ゴール裏に顔を出すようになってきた外国人サッカーファン(あるいはレッズファン)に向けてのメッセージだった、のだそうだ。

 曰く、応援の統制がとれなくなってきた、と。

 言い逃れか本当なのかは知らないが、わかりやすく言えば、外国人さんがうざかったから、ということになる。

 Jリーグの対応は迅速だった。5日後、新しく機構のトップに就任したばかりの村井満チェアマンは、Jリーグ史上初となる無観客試合という罰則を浦和レッズに適用することを発表した。

 浦和レッズは、スタジアム内において不適切な内容が書かれた横断幕が掲出されていたにもかかわらず、試合終了後までその横断幕を撤去できなかった。そこに書かれた言葉を、差別的表現だ、と受け止めた人間もいる。故に、掲出意図に関わらず、その言葉は差別的内容と判断できる。

 それが厳罰の理由だった。

 チェアマンの決定はとても正しかった、と僕は思う。

 無観客試合。その聞き慣れない言葉は、普段サッカーには興味を持たない人々までも巻き込んだ。この10日間ほど、メディアは何度も何度もこの問題をとりあげ、様々な人が様々な立場から、様々な口調で、この問題を論じた。

サッカーというスポーツが、どこまで運ばれてしまうのか。

 事件のあった日から、無観客試合までは2週間。ある一握りの愚かな人々の愚かな行動が、サッカーというスポーツをどこまで運んでいってしまうのか。そのことが長い時間にわたって議論されたことは、とても重要で有意義なことだった。

 リーグの理事会ではもうひとつの制裁措置、勝ち点剥奪も検討されたということだが、結果的にメディアにより注目され、より長い時間扱われるという点で、無観客試合はとても効果的だったと僕は思う。

【次ページ】 3月23日、その日は朝からとてもいい天気だった。

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