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青い空、5機のヘリ、殺風景な埼スタ。
観客のいないスタジアムで考えたこと。
text by
近藤篤Atsushi Kondo
photograph byAtsushi Kondo
posted2014/03/25 10:40
上空をヘリが旋回し、取材陣が見つめる殺風景なスタジアムでJリーグ史上初の無観客試合は行なわれた。春分の日の2日後、朝からとてもよく晴れた、いい天気の日だった。
やたらと取材陣が集まった練習試合にしか見えない。
午後3時、両チームの選手が入場し、正面スタンドにむかって整列した。無観客試合とはいえ、スタジアムの中がまったく無人というわけではない。記者席を埋め尽くした記者や関係者から、選手たちに向かって拍手が贈られる。ピッチサイドはフォトグラファーとテレビのカメラクルーでごったがえしている。これだけの取材陣がJリーグの試合に集まることは滅多にない。無観客故の人気カード、なんだかタチの悪い冗談に思える。
午後3時4分、主審の笛が鳴り試合が始まる。誰もいないスタンドに、甲高いホイッスルの音がよく響く。選手の声もよく聞こえる。
予想されていたことではあったが、これはどう見ても、やたらと取材陣が集まった練習試合にしか見えない。
はるか昔、まだ日本にプロサッカーリーグがない頃、国立競技場で2000人も入っていないような試合を観たことを思い出す。正面スタンドでバックスタンドをうろつく友人を発見し、おーいと声をかけて呼び止められるような時代だった。それでも、あそこには公式戦という空気が流れていた。コールも、チャントも、ゲーフラもなかったが、たとえわずかでも観客がいて、その観客の視線を感じながら選手たちはプレーしていた。
観る人がいて初めて、サッカーの試合は生命を帯びる、そんな感じだろうか。
スタジアムが退屈であくびをしているように見えた。
ここで試合の内容を長々と書いても仕方がない。
前半19分、エスパルスがCKから長沢のゴールで先制する。選手はもちろん喜ぶが、しーん、当たり前だけれどスタンドは静まり返っている。スタジアム上空から相変わらずヘリコプターのホバリング音が聞こえてくるだけだ。
後半31分、攻撃を加速させていたレッズが、原口のシュートで同点に追いつく。原口は小さくガッツポーズをし、選手たち数人が彼に駆け寄るが、しーん、スタンドはやっぱり静まり返っている。
本当ならここからサイスタは一気にハイテンションモードに入り、スタンドに集まった人々は絶対に日常では味わえない興奮を楽しみ始めることになる。さっきまで、なにやってんだよ! もっと前に行けよ! もっと攻めろよ! なにボール回してばっかいるんだよ! と自チームに野次を飛ばしていた人々が、凄まじいエネルギーで応援の叫び声を上げ始める。
でも、これは無観客試合だ。スタンドにはなんの心も感情もなく、ただそこにはプラスチック製の椅子がいくつもいくつも、所在なげに並んでいるだけだった。試合後、Jリーグ専務理事の一人は、スタジアムが泣いているように見えた、とコメントしたが、僕にはスタジアムが退屈で退屈であくびをしているように見えた。