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青い空、5機のヘリ、殺風景な埼スタ。
観客のいないスタジアムで考えたこと。
text by
近藤篤Atsushi Kondo
photograph byAtsushi Kondo
posted2014/03/25 10:40
上空をヘリが旋回し、取材陣が見つめる殺風景なスタジアムでJリーグ史上初の無観客試合は行なわれた。春分の日の2日後、朝からとてもよく晴れた、いい天気の日だった。
「なんかもう、むっちゃ辛かったですよ」
午後5時少し前、主審のホイッスルが鳴って、試合は引き分けで終わる。選手たちはセンターサークルのところで一列に整列し、お互いに握手をして健闘をたたえあう。そして、そのまま黙ってまっすぐロッカールームへと向かう階段を下って、ピッチから姿を消した。
1時間後、まだ大勢の取材陣でごった返すミックスゾーンを抜けて、メディアエントランスの外に出た。ちょうどレッズのベテラン選手の一人がチームバスに乗り込もうとしていた。
「無観客試合、どうだった?」
「もう二度と嫌ですよ、こういうのは」
彼は心底疲れたような、やるせなさそうな表情を浮かべて、言った。
「僕たちはプロを夢見てここまでやってきたわけじゃないですか。お客さんの前でプレーするってことを夢見て、ものすごくがんばってきたわけですよ。だめなときにブーイングされたりするのは全然OKだけど、でもやっぱ、これはいくらなんでもキツ過ぎますよね。観れないのもきついだろうけど、観られないのもすごくきつい。なんかもう、むっちゃ辛かったですよ」
……どこの国から来ても、アメリカ人でも、日本人でも、良い人もいればそうでない人もいることは分かっています。出身国で差別するのは残念ですが、世の中は間違った方向に少しずつ向かっている感じがします。将来を担う若者たちが少しでも良い方向に進んでくれることを私は願っています。(試合後の会見における浦和レッズ監督ミハイロ・ペトロビッチの発言より)