野球善哉BACK NUMBER
“ライトポジション”を探すために。
日本球界の「移籍観」を一新せよ。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2014/03/13 10:50
2度のトレードを経て、西武でも存在感を放つ渡辺直人。その時所属するチームへの貢献を考えてプレーし続けてきたことが、現在に繋がっている。
各チームが抱える「もっと輝ける選手」たち。
巨人は、井端弘和、片岡治大の加入で、内野陣の層が厚くなった。三塁手の村田修一と遊撃手の坂本勇人は鉄板のレギュラーで、二塁手争いは、昨季、ブレークを果たした寺内崇幸でさえ、出場機会が得られない。バックアップとして起用するにはもちろん貴重な戦力だが、彼は、もはやバックアップのレベルの選手ではない。彼のキャリアはもっと輝かせるべきだ。
ソフトバンクでは、'12年に1、2番打者として活躍し、左右に打ち分けるバッティングセンスを誇る明石健志、昨季の対左投手打率.346をマークした李杜軒が、出場機会が見込めそうにもない。明石は今年28歳、李は26歳と脂の乗った年齢にさしかかっており、使いようによっては、レギュラークラスの選手だ。
このほかにも、広島ではけがから復帰の栗原健太の居場所が約束されていない。栗原ほどの実直な性格だと、どのような起用をされようとも、じっと出番を待ち続けられるだろう。しかし、キラやエルドレッドの「助っ人外国人」という壁はかなり高く、彼のひた向きな性格は、他球団で生かしてあげたい。
阪神の選手会長に就任した上本博樹も、スタメン出場でこそ力を発揮する選手だろう。狙い球を打席の中で決めずに粘っていくバッティングと物おじしない盗塁への積極的な仕掛けは、控えに甘んじる選手ではない。
“ライトポジション”を見つけるための移籍を。
それぞれの球団には、“ライトポジション”を与えられていない選手たちがいる。その一方で、チームにはそれぞれウイークポイントがある。
だから、そこを上手くマネジメントすればいいのだ。
球団には、移籍した選手が他球団で活躍することを危惧する気持ちもあるようだ。
しかし、それはあまりにも弱気な考え方だし、チームを改善しようというマネジメントの意思に欠けるのではないだろうか。
結局、陰りの見えた選手同士でのトレードでは、劇的な変化は生まれにくい。選手の個性を尊重し、「“ライトポジション”を見つけるための移籍」という風に発想を転換させていけば、日本のプロ野球はもっと面白くなっていくに違いない。
裏を返せば、日本の野球界は“ライトポジション”を見分けるスカウティングという文化に乏しいということでもあるのだが、今後は移籍をもっと有効活用し、一人でも多くの選手が輝くようなプロ野球界であってほしいと願うばかりだ。