野球善哉BACK NUMBER
“ライトポジション”を探すために。
日本球界の「移籍観」を一新せよ。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2014/03/13 10:50
2度のトレードを経て、西武でも存在感を放つ渡辺直人。その時所属するチームへの貢献を考えてプレーし続けてきたことが、現在に繋がっている。
今季は、戦力外による移籍(育成契約除く)も含めて31人がチームを移った。
事情はそれぞれ異なるが、所属チームが変わることで、思わぬ効果を生み出すこともある。
例えば、'06年に横浜ベイスターズからロサンゼルス・ドジャースに移籍した斎藤隆は、まさにそのケースだった。
当時のドジャースは、それまでの3年間で不調が続いていた斎藤隆を、セットアッパーという役割なら彼が輝けると見抜いて獲得に踏み切った。
そして、斎藤隆は'06年、主にクローザーを務め、72試合に登板24セーブを挙げた。'07年にも、クローザー起用が続き、63試合に登板、39セーブ。その年のオールスターにも出場している。ドジャースが施したこのときのスカウティングと起用法は、目利きがあったといえる。
その考え方は、つまり、“ライトポジション”=正しい使い方をしてあげれば人は輝ける、というものに基づいている。
10cmの小さな花を100メートルある花壇に植えても目立たないが、小さな鉢に飾れば、10cmの花は輝きを放つ。
「移籍」にネガティブな印象を持つ日本球界。
常々思うのだが、日本の野球界はもっと「移籍」を有効活用すべきだ。
例えば、チームのあるポジションにレギュラーを張れるだけの選手が5人いた場合、日本的な発想だと、パフォーマンスに陰りができた選手から放出するケースが多い。しかしそれでは結局、いい補強、トレードの成功にはならない。そうではなく、脂の乗っている時に売りに出すことで、逆に自チームのウイークポイントを交換補強するという前向きなトライに転換するのだ。
選手たちの意識にも、問題はある。
選手はチームから出されると、「不要」の烙印を押されたと考えてしまう傾向にあり、移籍先のチームに必要とされているという発想にならない。取材を進めていると、移籍を経験した選手たちは、様々な心境に置かれているというのが分かった。