野球善哉BACK NUMBER
“ライトポジション”を探すために。
日本球界の「移籍観」を一新せよ。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2014/03/13 10:50
2度のトレードを経て、西武でも存在感を放つ渡辺直人。その時所属するチームへの貢献を考えてプレーし続けてきたことが、現在に繋がっている。
現在西武に所属する2人の対照的な移籍観。
例えば、西武に移籍して4年目の鬼崎裕司は「最初は悔しい気持ちと寂しい気持ちでした。ヤクルトには必要とされていなかった、という思いしかなかったですね。(西武に必要とされての移籍では?)そこまでは思えなかった」と吐露している。
鬼崎は昨季、キャリアハイとなる105試合に出場。打席数も前年を200打席上回った。今季は背番号が「4」に昇格し、今や西武にはなくてはならない存在になっている。1、2軍を行き来したヤクルト時代を思えば、彼の移籍は成功したといえる。そんな彼でも、前向きには捉えていない。
一方楽天から横浜、そして昨季途中から西武へ移籍してきた渡辺直人は「移籍はいいもの」と前向きに語る。
「選手の側からすると、最初に獲ってもらった球団で現役を終えるのが理想だと思います。僕でいうならば、楽天で終わるのがいい。でも、必要とされて移籍するのもいいものだと思います。野球選手として大きくなれるチャンスでもありますから」
渡辺は楽天を出された時は、「なんで俺が?」という気持ちが当然あったという。楽天ではレギュラーだっただけに、その気持ちは強かった。
しかし、横浜を何とか日本一にしたいと願い、そして今は西武で頂点を目指してやる自分の野球に変わりがないと気づいた時、移籍で得られることが多いと感じた。
「その時の立場で移籍した心境は変わるものではあると思いますけど、移籍してみて、いいものだと思いました。それは試合に出られるから、前の球団では試合に出られないからという話だけではなくてね。今回の僕は、もう一度、花を咲かせるチャンスだと思っています。野球選手である限り、試合に出たい。レギュラーを取ろうと思ってやっていますよ」
オープン戦で、余剰戦力となった選手もいるのでは……?
鬼崎の捉え方が移籍してきた選手たちのごく一般的な考え方だろう。だが、渡辺のように前向きに考えていくことで移籍がもっと良い方向に向いていくのではないか。
オープン戦が始まって中盤に差し掛かっているが、これまでトレードは決まっていない。しかし、ソフトバンクの大型補強に代表されるように、選手の移動が大きくあった今季は、それにより戦力余剰となった選手は、少なからずいるはずだ。