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DeNA・三嶋一輝、2年目で担う大役。
「開幕投手」の重圧を糧にする方法論。
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2014/03/18 10:40
オープン戦で好投し、中畑清監督から開幕投手の大任を命じられた2年目の三嶋一輝。昨年は1年間ローテーションを守り、6勝9敗だった。
第一線で投げ続ける三浦の言葉が三嶋の心を打った。
三浦は、「大したことは言ってないですよ」と多くを語らなかったが、DeNAにとって三浦は生きた教材である。瞬発系のトレーニングを取り入れ、全体練習前のアーリーワークも欠かさない。投球フォームのバランスが崩れたと感じれば、ブルペンでの投球をビデオに撮影し修正点を模索する。地道な努力を重ねながら22年も第一線で投げ続けるベテランの言葉は、三嶋の心に響かないわけがなかった。
昨シーズンの最終成績は6勝9敗、防御率3.94。三嶋本人も「納得していない」と語っていたように、優れた成績かと言えばそうではないだろう。しかし、規定投球回数をクリアした投手のなかではリーグトップとなる奪三振率8.92。強気の投球がもたらした成果は数字にも表れていたし、1月の自主トレでは三浦に同行するなど、意識の面でも着実に成長を遂げていることは間違いない。
「開幕投手」という言葉の重圧を乗り越えるために。
ただ、バックボーンを養い2年目への手応えを掴んだことによって、逆にプレッシャーを感じることもあった。
中畑監督はじめ首脳陣がほのめかした「開幕投手」という言葉。三嶋自身、「キャンプから色んなことを考えすぎてしまった」と呟くほど空回りが続いた。投球そのものが小粒となり、先の2試合での乱調という悪循環に陥ってしまったことも事実だろう。
しかし、そこで完全に緊張の糸を切らさないのが今年の三嶋である。
ソフトバンク戦の後、昨年と今年の2試合の投球をビデオで分析しながら、本来の自分の在り方を見つめ直した。
結果、たどり着いた答えが思い切り腕を振ることとマウンド上での躍動感。すなわち、三嶋の持ち味である強気の投球だった、というわけだ。
阪神戦での好投でひとつの答えは出した。だが、三嶋からすれば「最低限」でしかない。試合後、手応えよりも課題を口にしたことが、それを顕著に物語っていた。