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五輪で8位に入賞して悔しがる41歳。
葛西紀明、ラージヒルで「お返し」。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byKaoru Watanabe/JMPA
posted2014/02/10 12:15
悔しそうな表情でインタビューに答える葛西紀明。“レジェンド”と呼ばれる男は、次のラージヒルへ向けて逆襲を誓っていた。
悔しさをにじませていた。
2月9日、ノルディックスキー・ジャンプの男子ノーマルヒルが行なわれた。
日本からは、葛西紀明、竹内択、渡瀬雄太、清水礼留飛の4人が出場。中でも注目を集めていたのは、葛西だった。
41歳、冬季オリンピック最多の7回目の出場。今回出場した48人の選手中、むろん最高齢である。しかも近年では最高と言える成績を残し、シーズンを通じて上位争いをしてきた上でのオリンピックである。
1本目、葛西は飛距離101.5mで131.2点で8位につける。8位といっても、首位のカミル・ストッホ(ポーランド)と10.8点差、3位のペテル・プレヴツ(スロベニア)とは3.6点差。上位とは僅差だ。
迎えた2本目、葛西は100mを跳び、1本目とのトータルで255.2点でその時点で2位となる。順位は残り7人の選手のジャンプにかかったが、上位の選手たちが崩れることはなかった。
ジャンプは、いかにミスをしないかが重要な競技。
結果8位となった葛西は、試合をこう振り返る。
「1本目の位置だと、2本目によいジャンプができればメダルを狙える。やっぱり力が入ってしまう」
上位とわずかな差しかない8位という1本目の成績。十分、挽回できる距離であったことが、力みを生んだのだと言う。
以前、原田雅彦氏はこう語っていた。
「助走から踏み切る。空中での姿勢やバランス。それらを完璧にこなせばいいわけだけど、でも完璧なジャンプなんてめったにない。どれだけ失敗しないかなんです」
つまり、いかに減点を減らすか、ミスをしないかが重要な競技である。その中では、気持ちのありようもかかわってくる。踏み切りのタイミングも、力めばずれてくる。
葛西自身も、2本目のジャンプは踏切が遅れたと認める。
「あの風なら、104mとか105mは飛べた」
力が入ったからであり、上位を狙える位置につけていたからにほかならない。わずかな狂いが影響する、ジャンプという競技の繊細さでもある。
だからこそ葛西は、悔しい表情を見せたのだ。