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アジアの大富豪がインテル新会長に。
名門の人心を掴んだ笑顔と“中庸”。 

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弓削高志

弓削高志Takashi Yuge

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posted2013/12/04 10:30

アジアの大富豪がインテル新会長に。名門の人心を掴んだ笑顔と“中庸”。<Number Web> photograph by AFLO

インテル前会長のマッシモ・モラッティと新会長就任会見を行なったエリック・トヒル(左)。

 11月15日、インドネシアの大富豪エリック・トヒルが、インテルの新会長に就任した。クラブ初の外国人オーナーとして内外の注目を集める43歳のメディア王は、米国仕込みのビジネスセンスとアジアの中庸精神を使い分けながら、名門インテルの再建に着手したところだ。

「われわれがやるべき仕事の第一歩は、売り上げアップだ」

 インテルの経営はどんぶり勘定そのものだったといっていい。前会長の資産家マッシモ・モラッティは、稀代のロマンチストだった。オーナー職にあった18年9カ月の間に、国内外で16個のタイトルを獲得した。クラブのトロフィールームは埋まったが、金庫には1億8000万ユーロ(約250億円)分の借用書が積みあがった。

 ここ2年で計6200万ユーロに上る人件費の大幅カットを断行したにも関わらず、昨季の総売上高は1億6730万ユーロに留まった。トヒルとビジネスパートナーによる買収資金の大部分は赤字の穴埋めに使われる。

 DCユナイテッド(米国MLS)の筆頭株主でもあるトヒルにとって、これまでの経営陣がとってきた放漫経営は許せるはずがない。新オーナーは、2年後の2015-'16年シーズン決算を目処に、クラブ収支から赤字を一掃することを何よりまず宣言した。

「青春時代の私もインテルに熱狂した」

 ジャカルタの財閥ファミリーに生まれ、米国で経済学を修めたトヒルは、母国で出版・通信・ウェブ事業を手がけ、一大メディアグループを作り上げた。元々バスケットへの関心は強かったが、DCユナイテッド買収を契機にサッカー界への本格参入を始めた。

 本場である欧州への思いを強めたのはわかるが、なぜイタリアだったのか。なぜインテルだったのか。

「'80年代、アジアでのセリエAの認知度は、かなりのものだった。青春時代の私もインテルに熱狂した。お気に入りはFWベントラだった」

「スペインで勝つのは2強ばかり。イングランドにはもっと競争があるが、われわれの買収条件に合致するクラブは少ない。欧州のクラブならどこでもいいわけではなかった。ウェストハムを買う理由はないだろう? 買収するのなら、名声と歴史を持つクラブでなければいけなかった」

【次ページ】 メディア対応、会合、根回し。新会長の仕事は多い。

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