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<レジェンドが語る開催国の光と影> ロマーリオ 「私はW杯をめぐる不正と戦う」
text by
田村修一Shuichi Tamura
photograph byDaisuke Ito
posted2013/12/04 06:01
ブラジルの腐敗の現状を目の当りにした。国民の財産である
サッカーを不正から守るため、レジェンドが立ち上がった。
穏やかな秋の一日、ロマーリオは落ち着いた様子で、ブラジリアの広大な自宅で寛いでいた。ガレージには2台のレーシングカー。お決まりのプールと人工芝のピッチ。もうひとつの砂のピッチはビーチバレー用である。所有するヨットは、ブラジリア湖のプライベート埠頭に無造作に繋いであるという。
新築間もない邸宅は、さまざまな人で溢れかえっている。仕事師や家政婦たち、ジャーナリスト。プレスオフィサーは、時間厳守とは無縁の気まぐれな夜の鳥を、スケジュール通りに仕切ろうと四苦八苦している。
ひとりの少女が、愛くるしさを振りまきながら駆け回っている。生まれながらにしてダウン症のハンディキャップを背負った次女のアイビーである。彼女の存在が、ロマーリオに政治家への転身を決意させた。2009年にPSB(ブラジル社会党)に入党した彼は、1年後に国会議員(4年任期)に初当選した。
その後の活動は真剣そのものだった。討論への積極的な参加と法案の提出、そして何よりも、政治腐敗に対する糾弾は、ブラジル国民に大きな驚きと衝撃を与えたのだった。
――国会議員になり、生まれ故郷のリオを離れブラジリアで生活していますが、今のあなたにリオはどんな位置を占めていますか?
「僕は今も100%カリオカだ。ジャカレジーニョという名のファベイラ(貧民街)で僕は生まれた。ずっとリオを愛しているよ。残念ながら現在のリオは、'14年W杯と'16年五輪のためのさまざまな建設工事で苦しみの最中にある。とりわけ交通網整備のための負担は膨大だ。リオの交通渋滞はまさに地獄だからな。