プロ野球亭日乗BACK NUMBER
ポスティング制度が破棄されたら……。
日本球界を待つ“終わりの始まり”。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byGetty Images
posted2013/11/22 10:30
ポスティング制度の見直しを表明したMLBの最高執行責任者ロバート・マンフレッド氏。新案を検討し、改めて日本側に提示する見通しだ。
日本側は、さらに不利な制度案を飲めるのか?
田中獲得にやっきになって、何とか新ポスティング制度の締結に動いているのはヤンキースやドジャース、シカゴ・カブスやテキサス・レンジャーズなど巨大都市をフランチャイズにするチームだけだと言われる。残りの3分の2近くの球団は、今回の日本との新ポスティング制度締結にはそっぽを向いている。それだけにこれから出てくる新しい制度案は、日本側にとっては、不利で相当にシビアな形になる可能性を孕んでいるというわけだ。
その厳しい条件を果たして日本側(第1案ですら苦渋の選択だったはずの選手会を含めて)が飲めるのか? それともポスティング制度そのものの廃止を視野に入れて検討するのか。今後、残された道は2つに1つとならざるを得ないのである。
そしてもし、ポスティング制度が破棄されて、海外移籍の権利獲得に9年かかる現行のFA制度だけとなったら、それは日本の野球界が崩壊する一つのきっかけにもなる重大事となるだろう。
このままでは、メジャー直行が激増する可能性が。
以前このコラムでも書いたが、すでにポスティング制度自体が、本質的には当初の「選手の夢を実現するための制度」から外れて、鵺(ぬえ)的な制度となってしまっている。
それに代わって日米の選手移籍をスムースに進める制度としては球団間の国際トレードを認める一方で、現状では海外移籍の権利取得に9年かかるFA制度を短縮して整備していくしか道はないように思う。今の時代に9年というのは、あまりに長過ぎるのだ。
にもかかわらずこのままポスティング制度が廃止されて、現行のFA制度だけが海外移籍の手段となったら、アマチュアから直接メジャーを目指す選手が続出するはずである。
過去で言えば西武・菊池雄星や日本ハム・大谷翔平両選手も、実質7年程度でメジャー移籍できるポスティング制度がなければ、国内を選択していたか、はなはだ疑問の残るところだ。
日本のプロ野球を経ずにメジャーへの道を歩んだボストン・レッドソックスの田澤純一投手が成功して道をつけたのも大きい。優秀であれば優秀であるほど、日本のプロ野球を経ることなく、直接メジャーの門を叩く。FA制度の改革ないままのポスティング制度の廃止は、その可能性を大きく膨らませることになるわけである。
これは終わりの始まりかもしれない――選手会(の一部幹部)の浅はかな行動から始まった今回の騒動の陰には、そんなきな臭さが漂っているのである。