野球善哉BACK NUMBER
FA制度の改革策を、大胆提案!
ドラフト補償で、戦力の均衡を図れ。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byHideki Sugiyama
posted2013/11/20 10:30
5球団競合となったくじを、楽天に引き当てられた松井裕樹。新制度が導入されれば、有力な選手ほどドラフトの結果は激変することになるだろう。
ストーブリーグがいよいよ熱を帯びてきた。
今年ほど、FA権を行使した選手が多士済々な顔ぶれだったことは、過去になかったかもしれない。
西武の涌井秀章をはじめとして、広島の大竹寛、阪神の久保康友、同じく西武の片岡治大、日本ハムの鶴岡慎也ら実力派がそろっている。どの球団も、自チームが描くパズルに貴重な役割を果たすであろう彼らの入団に、期待感を抱いているに違いない。
FAといえば、過去には「お金でチームを強くする」イメージが強くあったが、今の時代、チーム強化の仕方は様々あってよいという風潮に変わりつつある。これは「移籍」というものが、少しずつ良い方向へと変わっていきつつある兆候だろう。FA移籍のダークなイメージは、消え去ったと言っていい。
しかし、何もかもが順風満帆に進んでいるように見えるこの制度に、ひとつ提案を申し上げたい。ストーブリーグをさらに過熱させるものとして、捉えてもらいたい。
それは、FAによる補償制度の問題だ。
現行の制度下では、FA宣言する選手にランクが付けられ、そのランクによって補償が定められている。Aランクの選手ならば、獲得球団から補償金とプロテクト選手を除く選手を獲得できる。Bランクであれば、獲得球団からの補償金額が少し下がり、プロテクト外選手を獲得できる。Cランク以下は、補償がない。
選手は、いわばチームにとっての無形資産。
そこで、提案したいのが、補償制度での選手譲渡をやめ、ドラフトにおける特権を儲けるというものだ。
当コラムで何度も書いてきているように、チームを強くする第一歩は、ドラフトの強化である。スカウトが眼力を利かした選手を獲得し、育て上げる。どの選手をチームの骨格に据えるかを想定しながら、指名して育成していく。そうすることでチームは強くなっていくのだ。
選手は、いわばチームにとっての資産であり、この資産の価値を高めていくことがチームとして果たしていくべきことなのだ。
だが、育て上げた選手をFAなどで失うというのは、その資産を奪われるということである。これを、金銭や選手譲渡で払うという形ではなく、ドラフトという選手を生み出すスタートの位置に立ちかえり、特権を与えるというのはいかがだろうか。