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<狂気の左サイドバックが語る代表の20年> 都並敏史 「僕を一回り超える世界基準の男が現れた」 

text by

一志治夫

一志治夫Haruo Isshi

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photograph byTadashi Shirasawa

posted2013/11/15 06:01

<狂気の左サイドバックが語る代表の20年> 都並敏史 「僕を一回り超える世界基準の男が現れた」<Number Web> photograph by Tadashi Shirasawa

11対11を“11対12”にできる長友佑都の総合力。

 左サイドバックでは、僕と相馬。そのあとの三都主は攻撃者だからね。僕と相馬は攻撃、中盤、守備とバランスよくできた。だけど、それを一回り超えちゃったのが長友佑都です。細かいところでは僕が勝っているところもあるかもしれないけど、総合点で言えば話にならないでしょ。

 長友のすごいところは、チームに貢献できるところです。現代サッカーでは、中央でゴールを割るのは難しい。ということは、サイドの選手の活躍が鍵を握る。サイドの選手というのは、守備の助けもできれば、攻撃の助けもできる。でも、現実的には体力が間に合わなくて、守備6に攻撃4にしたり、あるいは僕が認めない守備7に攻撃3にしたり。

 でも、長友は、守備と攻撃を全部やれるわけです。これはすごいことですよ。11対11が11対12になっているということだから。それは我我にも明らかにできなかった。危ないときは戻る、危なくないときは戻らなくてもいいというプレーを正確にやるには、戦術的な理解も必要だし、頭がよくないとできないんです。

長友がはっきりやられた場面の記憶がない。

 都並は、2008年から日本代表を引き継いだこの左サイドバックを絶賛した。刮目に値するのは、長友がまだ27歳であるということだ。なぜ、ここまで急成長したのか。

 それはすべてメンタルですよね。我々から見れば、化ける、ということになるけど、彼は、化けようと思って準備してきたわけだから。毎日何かを意識して積み重ねていかなければあそこには絶対行けないから。そういうことを思っていなくて、漠然と生きているヤツに化けろと言っても化けられないんです。 長友は、世界一のサイドバックになるという目標を持って、公言して、毎日努力しているわけですよ。

 長友は、もともと守備力も走力もあり、感覚も持っていた。それがイタリアに行って、素晴らしい選手とやってさらに伸びている。ちょっと上手いやつとやるだけでも経験は上がっていくけど、世界の一流と毎日やったらどれだけ伸びるか。しかも、いまだ成長過程なのに、長友がはっきりとやられたという場面の記憶がない。ポカがないんです。30歳で経験と体の動きがマッチするとすると、まだまだピークまで時間がある。怖いぐらいです。

 僕の時代はアジアが精一杯だったじゃないですか。世界の扉がまだ開いていなかったから。アジアの157試合(Aマッチ以外も含む)の中で僕はいろんな経験をしたわけですよ。でも、右サイドバックの内田篤人にしても、酒井高徳にしても、アジアを越えて世界で経験している。それがすごいところです。

【次ページ】 Jリーグでみんなの意識が変わったわけです。

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