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「サッカーやるなら勝ちたいでしょ?」
松井大輔が現代表に向けて語ること。 

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寺野典子

寺野典子Noriko Terano

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photograph byNoriko Terano

posted2013/11/14 10:30

「サッカーやるなら勝ちたいでしょ?」松井大輔が現代表に向けて語ること。<Number Web> photograph by Noriko Terano

シーズン前のバルセロナとの親善試合では先制点をアシストするなど、グダニスクでもチームの中心として攻撃のタクトを振るっている。

 2010年6月14日。ワールドカップ南アフリカ大会初戦のカメルーン戦で、貴重な決勝ゴールをアシストした男は、その後、ロシアのトムスク、フランスのグルノーブル、ディジョン、ブルガリアの首都ソフィアでプレーし、今年夏、ポーランドのグダニスクへと辿りついた。そして今季は開幕戦で2ゴールを決めるなど、チームの支柱として活躍している。

「本当に時間が経つのは速いよ。日々成長する子どもを見ていると、時間を大事にしなくちゃいけないと強く感じるんだよね」

 試合翌日の午後、遅いランチをとりながら松井大輔は目を細めた。

 ブルガリアでね、選手の視察に来ていた岡田(武史)さんと会ったんだ。久しぶりに話をしたんだけど「なんで俺だったのか?」と聞いてみればよかった。

 前回のワールドカップ予選が終わってから、俺はそれほど代表で活躍していなかった。2009年秋の欧州遠征には参加していないし、先発したのは11月の香港戦と、翌2010年春のバーレーン戦だけで、5月24日の韓国との壮行試合も怪我でベンチを外れている。なのに、W杯初戦で先発起用してもらえた。自分のことながら少し不思議に思っていたから、理由を聞いてみたかったけど、結局は聞けなかった。

 W杯のメンバーに選ばれたものの、膝の痛みは消えてなかった。監督にも「もうこれダメだな」と言われたけど「ちょっと待ってくれ。本番までにはあと3週間ある。とにかくW杯の初戦に間に合わせる」と。

 自分にとって、チャンスは最初の1試合だけだという気持ちもあったから、そこへ向けてコンディションを上げることに集中した。スイスでの高地トレーニングを終えて、山を降りたら、身体が軽く走れると実感した。でも迎えたコートジボワール戦では、前後半を終えたあとの3本目にしか起用されなかった。

「俺は先発でも途中出場でもない立場なのか」と、そのときはさすがに「ヤバイな」と思ったよ。

岡田さんは常に、調子がいいと思った選手を起用していた。

 当時日本代表は4連敗中で、チームのムードは決して良いものでなかったけど、俺は自分のことだけを考えていたような気がする。「W杯でドリブルをしたいとか、ゴールを決めたい」という思いが強かったし、とにかく自分のコンディションを上げることだけしか考えていなかった。一匹狼じゃないけど、俺のポジションは一人で打開するそういうポジションだと思っていたから。

 南アフリカに到着してから3ボランチにシステムが変わり、メンバーにも変化が生まれた。「これで初戦は行くんだな」と確信したのは、ジンバブエ戦(6月10日)で先発した時。

 大会直前に守備的な戦い方に変えたと言われているけれど、監督から「引いて守れ」という指示はなかったと思う。それまでは前線からプレッシャーをかけ続けていたけれど、それをやめて、少し守備のブロックを下げようという感じだった。そして、スイス合宿の頃から、「サイドにボールが渡ったら、すぐにクロスをあげる」というのを徹底して、その練習を繰り返した。

 カメルーン戦でも何度かクロスを上げたけれど、なかなか合わなくてね。右のキックの精度が良くなかった。だからボールを持ったときに切り返して、タイミングをずらして左であげてみたら、それを(本田)圭佑が決めてくれた。

 今思うのは、岡田さんは常に、そのとき調子がいいと思った選手を起用していただけなんだよね。非常にシンプルな采配なんだ。だから、俺を起用してくれたことにも今は納得ができる。

【次ページ】 苦しんでいる現在の日本代表に向けて語ること。

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