野次馬ライトスタンドBACK NUMBER
プロ野球ファン最大の関心事!?
背番号をめぐる悲喜こもごも。
text by
村瀬秀信Hidenobu Murase
photograph byKYODO
posted2010/12/28 10:30
斎藤佑樹の背番号は「18」。他チームで同じ番号だと、田中将大(楽天)、前田健太(広島)、涌井秀章(西武)などエースが多い
2010年、年の暮れ。世間は忘年会シーズンまっさかりである。そんな夜の居酒屋ゲタ箱で、「俺のだ!」「私のだ!」と揉めている人たちを見たら、即ちそれは野球ファン。昭和の時代、銭湯のゲタ箱で長嶋の「3」を奪い合ったというこの国の奇習は、21世紀となった今にも連綿と受け継がれているようで、この時期「わがチームの今年の総括と来季の展望」と銘打った忘年会が行われる居酒屋では、札取りの光景も頻繁に見られたり、見られなかったり。
札の数字は、即ち背番号。1、3、7、24、31、44、51、55、78……数字を挙げれば、あの選手の面影が浮かぶように、背番号は選手にとっての“第二の顔”のようなもの。車のナンバーや携帯番号、メールアドレス、銀行口座に馬券にナンバーズに、子供の名前に、引退後に出した店の名前にと、選手自身もラッキーナンバーとして深く関わることが多い大事なパートナーである。
今オフも、ドラフト、トレード、FAに、選手によっては契約更改での背番号変更も終了と、背番号のシャッフルがいち段落した感がある。昇格した選手、降格した選手、期待を託された選手等々、新たに託された来年度の新背番号事情。居酒屋で拾った酔っ払い気味のファンの声を中心に考えてみたい。
背番号で分かる球団が選手にかける期待の大きさ。
背番号は、語呂や縁起のよさ、偉大な先人の番号、伝統的なポジションの番号など、何かしらの由来をもってつけられることが多い。もちろん「空き番号だったから」、「好きな番号だったから」という理由が一番多いのだろうが、目玉の新入団や期待の選手へは背番号の選定も優遇されており、その番号から球団の当該選手への期待の度合いが見えてくる。
いうなれば球団は名付け親であり、選手は“背番号”という名前を貰う子供。どんな選手に成長してほしいのか、どんな思いを込めてその番号をつけるのか。横浜・阿斗里の「58」(ゴーヤ。沖縄出身)のように突飛な理由でも、意味があればなんでも嬉しいもののようだ。
なかには雑なつけ方も見受けられるが、やはり愛情がない背番号の命名はその後の成長に支障をきたすような気もしてくる。筆者が小学生の時、「名前の由来を親に聞いてくる」という授業で「なんとなく」と親に言われたTくんが、その後、見事にグレて、後に背じゃない方の番号で呼ばれるようになってしまったことを考えれば、選手の背番号もせめて「ピッチャーぽい番号だから」ぐらいの意味はつけてほしいところだ。