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40歳目前でもまだ投手は進化できる!
世界一の上原浩治、異次元の制球力。
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byAFLO
posted2013/11/01 11:55
ワールドシリーズで世界一決定の瞬間のマウンドを任された上原。ポストシーズンで7セーブとメジャータイ記録に並んだ。
次元の異なる上原の驚異的なコントロール。
今季、上原が投げた球種のなかではスプリットが最も多く、ついでストレート。このふたつの球種で90%以上を占める。上原が「カット系」と呼ぶ球もわずかだし、カーブはシーズンに3球を投げただけである(そのうち1球はエンジェルスのケンドリックに対する死球になった)。
しかし本人の中では、コントロール、英語でいうところの「ロケーション」も3番目の球種=武器になっていたのである。
「キャッチャーが構えたところにボールが収まるのは、シーズンに1球あるかないか」
と上原は日ごろ語っているが、上原の制球力は違う次元に達しているから、そうした厳しい評価が出てくる。
構えたミットの反対側にいってしまう、いわゆる「逆球」はポストシーズンで見た記憶がない。
いま、メジャーリーグで打者は情報分析によって丸裸にされているから、バッテリーからみれば、「攻略法」が簡単に見つかる。しかし、それも投手の制球力があっての話。上原は攻略法通りに打者を攻めることが可能だったのである。
ポストシーズン13試合に登板し、16奪三振、四球はゼロという数字がすべてを物語っている。
ワールドシリーズでは、三振奪取率が極端に下がっていたのだが、さすがに疲れていたのだと思う。しかし、ボールは低目にコントロールされ、長打を喫する気配はなかった。
精密なコントロールは、新しい球種に匹敵する武器なのだ。
上原はさらに進化することができるのか?
それにしても、メジャーでも最高級のコントロールを、38歳にして手に入れたというのは驚異的なことだ。
40歳を目前にしても、投手が進化できることを上原は証明したのである。
アメリカのセイバーメトリクス・サイト、「FANGRAPHS」では、2014年の上原の成績を次のように予想している。
5勝1敗 28セーブ 防御率1.76
この予測を信じるならば、来季も上原はレッドソックスの守護神として活躍するということになる。