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セイバーメトリクスでは限界がある!?
メジャー球界の越えがたい年俸格差。
text by
菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi
photograph byGetty Images
posted2013/10/27 08:01
カージナルスの右腕エース、アダム・ウェインライト。カージナルスでメジャー昇格してから、チームを牽引してきた。今シーズン、34試合に登板し、19勝9敗、防御率2.94と好成績を残している。
今シーズンの最後を飾るワールドシリーズに、レッドソックスとカージナルスの2チームが進出した。
両リーグの最多勝チーム同士の順当な対戦となるが、実はこれ以前に最多勝チームでの対決が実現したのは、1999年のヤンキース対ブレーブスと14年も前の話となる。
いくらシーズンで好成績を残そうとも、プレーオフを勝ち上がっていくのはそれほど難しいということなのだ。
今年のプレーオフは、21年ぶりにプレーオフ進出を決めたパイレーツをはじめ、レイズやアスレチックスなど多くの低予算チームが台頭したことで話題になった。だが結局、ワールドシリーズに進出したのは年俸総額でメジャー4位のレッドソックスと同10位のカージナルス。低予算チームの大躍進とまではいかなかった。
下位チームの躍進をもたらした“セイバーメトリクス”。
一昨年に映画化され、今や日本でも知られる存在になっているノンフィクション書籍、『マネー・ボール』。
同書に描かれているアスレチックスのビリー・ビーンGM。彼の、低予算ながらもこれまで注目されてこなかったデータを用いて選手補強をする、という戦略はたちまち話題となった。
2003年にこの本が出版されて以来、こうした統計学上のデータから選手を分析する手法“セイバーメトリクス”が、メジャー球界でかなり定着してきた。
それを物語るように、MLB公式サイトの各選手の成績データには、今では投手成績にWHIP(1イニング平均の四死球+安打数)、打者成績にはOPS(出塁率+長打率)が通常データとして紹介されている。
また今年ア・リーグのリーグ優勝決定シリーズを中継したFOXテレビも、打者が打席に立つ時に紹介する成績字幕にもOPSが入っているほどだ。
さらに今や日米で注目を集め続けているレッドソックス上原浩治投手の投球の素晴らしさを紹介する上で、頻繁にK/BB(1四球当たりの奪三振数)が使用されている。もちろん十数年前はそれらのデータは見向きもされなかったものだ。