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欧州遠征で無得点の“ジーニアス”。
それでも柿谷が絶対に必要な理由。 

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矢内由美子

矢内由美子Yumiko Yanai

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photograph byTakuya Sugiyama

posted2013/10/21 10:30

欧州遠征で無得点の“ジーニアス”。それでも柿谷が絶対に必要な理由。<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

ベラルーシ戦後、攻撃陣の連係について「うまくいっている、いっていないだけじゃなくて、ただただ勝ちたかったんで、それだけです」と答えている柿谷。

本田圭佑が絶賛した「個」のポテンシャル。

 柿谷の「個」のレベルがいかに高いかは、8月のウルグアイ戦で初めてともにプレーした本田圭佑のハートを瞬時に射貫いたことからも明らかだ。

 6月のコンフェデレーションズ杯で「サイドから単純なクロスという形は、長身選手が最終ラインに並ぶ世界トップレベルのチームが相手だとなかなか通用しない」(長友佑都が代弁)と感じた本田は、「左サイドからの崩し」という日本の最大の武器に加え、「中央を崩していく」という新たなオプションを模索し始めていた。

 そこに彗星のように現れたのが柿谷だった。

 本田は小躍りするがごとく、遅れてきた新星を歓迎した。9月に国内で行なわれたグアテマラ戦、ガーナ戦では「曜一朗は非常にボールが収まる。ようやくこういうタイプの1トップが出てきたかという感じがする。すべてを兼ね備えている感じがする。彼のポテンシャルはまだまだ計り知れない」と絶賛した。

「曜一朗には『一本』がある」とは清武の評。

 柿谷の台頭については、セレッソ大阪でともにプレーしたことのある香川と清武の言及も興味深い。

 香川は「曜一朗はどこで欲しくて、どこで出せばいいのかというタイミングを分かっている。しゃべらなくても分かるし、フィーリングはすごくいい」と言い、セレッソ時代との変化については「裏への飛び出しや、本当にシンプルにゴールを狙うようになっているところが前と違う」と説明した。

 香川が「シンプルになった」という言葉を使ったように、10代のころの2人を知る関係者は、「真司も曜一朗もテクニックは素晴らしかったが、真司が得点そのものへの意識が高かったのに比べると、曜一朗はテクニックを見せたいという意識が強かった」と話している。柿谷は以前とそこが変わった。日本代表の座を手にするに至った大きな要因である。

 今もセレッソの試合をインターネットでほとんどチェックしているという清武は、「曜一朗は技術があるし、すべてにおいて凄いプレイヤー」と言ったうえで、「『一本』がありますね。ずっと消えていても最後に仕事をしちゃうという。セレッソの試合ではそういうシーンがたくさんあるし、たぶん曜一朗も一本のパスで決めるのを狙って動いているのだと思う」と分析した。

【次ページ】 柿谷はなぜ東欧2連戦でくすぶったのか。

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