ゴルフボールの転がる先BACK NUMBER
東京五輪を見据え進化した日本OP。
ゴルフ界は世界基準に追いつけるか?
text by
桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph byNippon News/AFLO
posted2013/10/22 12:05
「日本オープン優勝で5年シードを得られたので、欧州ツアーでもたくさんプレーできるのが嬉しいですね」と海外での活躍にしっかり目を向けていた、優勝者の小林正則。
日本ならではのゴルフコースとは?
「これまでの日本オープンでは選手たちがラフを警戒し過ぎてドライバーを持たなかった。でもこれからは、選手たちが世界に出ていかないといけない時代です。日本国内でアイアンしか打てない選手が、メジャーで、外国で通用するはずがない。縮こまってやるゴルフと、伸び伸びやるのでは、ゴルフは全然違うんですよ」
極限状態でいかに選手の潜在能力を最大限にひき出だせるか。そのためには、選手が頭を悩ませながらも、気持ちよくプレーさせるべきと判断したのである。
今回のセッティングに関わったスタッフは6月、メリオンGCで行われた全米オープンを視察した。難関を極めた海外メジャーを目にすれば「ようし、日本でも」なんていう舶来思考が湧いてきそうなもの。
しかし彼らの印象に残ったのは、日本と米国の芝質や湿度など環境の違いだった。
「日本のコースの特徴を活かさなければ意味が無いんですよね」とスタッフたちは口にする。
多くの選手たちが「フェアだ」と評価した点、日本のコースの特徴を汲み取った点が、その例年よりも短いラフのセッティングにあったのだ。
日本のコースセッティングは行き過ぎの面があった!?
日本では多くのコースで、フェアウェイ周辺が高麗芝となっており、ラフの範囲を拡げようとすれば、その高麗芝を伸ばすことになる。この芝種は緻密に生えそろい、芝目が強いのが特徴。フェアウェイからわずかに転がって入るような、勢いのないボールも、すっぽりと包みこんでしまい、選手たちはたちまち困難な状況に陥る。
しかしこの高麗芝よりももっと外側、フェアウェイからより遠い位置のラフは、野芝という芝種で、こちらは密集度が少なく、プロにとっては打ちやすいケースが多々ある。
それゆえ、ラフを意図的に長く設定したコースでは、ドライバーショットで「より大きく曲げた方が得」なんてことがある。
むやみやたらにラフを伸ばすことで、結果的にアンフェアな状況が生まれてしまう――そんなセッティングが日本のコースの特徴とまで言われることもあった。