ゴルフボールの転がる先BACK NUMBER
東京五輪を見据え進化した日本OP。
ゴルフ界は世界基準に追いつけるか?
text by
桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph byNippon News/AFLO
posted2013/10/22 12:05
「日本オープン優勝で5年シードを得られたので、欧州ツアーでもたくさんプレーできるのが嬉しいですね」と海外での活躍にしっかり目を向けていた、優勝者の小林正則。
「ここ数年で一番良いセッティング。ティグラウンドからグリーンまで、すべてがフェアで素晴らしい。いい意味で難しい。ジャパンオープンにふさわしい舞台だ」
片山晋呉がそう話していたのは、今年の日本オープンが開催される1カ月以上も前のことである。
片山はその舞台となる茨城ゴルフ倶楽部東コースを9月上旬に訪れ、知人たちとのプライベートラウンドでコンディションを確かめていた。
そして「今年は、本当に強い選手が勝つはずだ」と語気を強めていたのである。
“攻めのゴルフ”を誘う素晴らしいコースセッティングに。
毎年の“ゴルファー日本一”の称号を争う日本オープンといえば、我慢、忍耐といったフレーズがつきまとってきた。
狭く絞られたフェアウェイを命綱に、ティグラウンドから決死の思いでグリーンへとたどり着く。ボールがわずかでもラフにこぼれてしまえば、たちまちボギーの確率は高くなり、起死回生を図るにはショートゲームに頼るしかない。眉間にしわを寄せ、ボールがカップの底を叩く音を聞いてから、息も絶え絶えに次のホールへと向かう。
選手、ギャラリーはいつも恐怖心と背中合わせで、会場全体に閉塞感が漂うことも珍しくなかった。
だが今年、この日本一決定戦は、賜杯に至る道のりの性格を大きく変えていたのである。
18ホールの総距離は大会史上最長の7320ヤード。例年120ミリ以上ともされた両サイドのラフは、80ミリ~90ミリと短くなった。さらにフェアウェイも25ヤード前後の幅を持たせた。つまり、選手たちに思い切った攻めのゴルフを許容したのだ。
「最近は“イジメ”のゲームになっていましたよね」
真顔でこう話したのは、日本ゴルフ協会(JGA)の佐野文範氏。今大会のコースセッティングにおける責任者である。
今年、掲げたコンセプトは「世界に通じる道を作る」(佐野氏)ことだった。