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ヘルタの舵取りを託された細貝萌。
勝敗を背負う“覚悟”が変えるもの。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byAFLO
posted2013/10/03 10:31
昨年2部で優勝して1部に昇格したヘルタは現在5位と好スタートを切った。細貝もアウクスブルク時代の恩師であるルフカイ監督のもと、中心選手としてプレーしている。
我こそが、チームのキーパーソンである。
そんな自負を持ってヨーロッパでプレーしている日本人選手が、一体、何人いるだろうか。ヨーロッパでプレーするのはあくまでも自分の幸せや成長のためであり、代表でプレーするときにはそこにチームや日本国民のことが加わる。それが大半の日本人フットボーラーの考えだろう。その考え方は少しも悪いものではない。
しかし、世界中からサッカー選手の集まるヨーロッパの舞台で、自分のためだけではなく、チームのため、あるいは地元のファンのためにも汗を流せる立場にいるとしたら、どんなに幸せだろうか。
そんな立場にいるのが、ヘルタ・ベルリンの細貝萌である。
今シーズンからヘルタに加わった細貝は、開幕からリーグ戦のすべての試合で不動のレギュラーとして中盤の底でプレーしている。開幕戦は後半38分で交代を命じられたものの、ブンデスリーガ公式HPでMVP3位に選ばれた。第2節から第7節まではすべての試合で、フル出場を果たしている。
昨シーズンの後半戦、レバークーゼンでわずか5試合しか出られなかった時期と、その存在感は大きく異なっている。
ボランチとして出場し続けることの大切さ。
何より大きいのは、自身の本来のポジションであるボランチで出場機会を得ているということだ。
今シーズンが始まる前、「レバークーゼンでの1年というのはすごく貴重なもの」と前置きしたうえで、こんなことを話していた。
「レバークーゼンでは(サイドバックでの起用が多かったために)真ん中のポジションでプレーした時間は1年間で90分もなかった。スタメンからボランチで出ても、7、8分で怪我人が出てサイドバックに回った試合もあった。コンフェデ杯ではブラジル戦の残りちょっとと、メキシコ戦では出ましたけど、メキシコ戦でなかなか思うようなプレーができなかった。コンフェデの期間中は思わなかったですけど、コンフェデが終わって、3試合代表で良い結果が出なくて、自分もレバークーゼンでの自分がやりたいポジションで普段やっていない、試合に出ていなかったことはすごく痛いことだったなと感じました」
そんな苦しんだ1年を払拭するかのように、今シーズンは中盤の底で攻守にわたり活躍を見せている。