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ヘルタの舵取りを託された細貝萌。
勝敗を背負う“覚悟”が変えるもの。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byAFLO
posted2013/10/03 10:31
昨年2部で優勝して1部に昇格したヘルタは現在5位と好スタートを切った。細貝もアウクスブルク時代の恩師であるルフカイ監督のもと、中心選手としてプレーしている。
数字が物語る、細貝の圧倒的な存在感。
フランクフルトとの開幕戦ではダブルボランチのひとりとして攻撃的な役割を担うと、アラギのゴールをアシストするなど、勝利に貢献した。それ以降は守備的な役割を担うことが多いが、相手のボールをかすめとるなどしてピンチの芽を摘んでいる。
そんな細貝の存在感は具体的なデータにも表れている。ボールタッチ数はチーム2位の376回で、走行距離はダントツのトップの80.16キロ。走行距離に関しては、守備的なポジションを得意とする2位のルステンベルガーより6キロ以上上回っており、1試合平均で1キロ以上も長く走っている計算になる。
あるいは、目立たないながらも、細貝の攻撃での貢献度の高さを物語るデータもある。
「自分のところから出すボールが直接チャンスになるというのではなくて、例えば自分がサイドに散らすことで、そこからチャンスになるような場面が増えていけばなと思いますけど」
自分に与えられた役割と、自由に動く「余地」。
そう語る細貝の被ファール数(相手から受けるファールの回数)は、攻撃的なポジションの選手にまじってチーム2位の16回となっているのだ。
通常ならば攻撃的なポジションの選手が多くのファールを受ける。彼らの攻撃時のアクションに対して、それを止めようとするディフェンダーがファールを犯すからだ。ボランチのような、守備的なポジションの選手が受けるファールの数は多くない。守備的なMFである細貝が多くのファールを受けるのは、細貝を経由して攻撃が始まることを警戒した相手チームが、その起点をつぶそうとするケースが少なくないことを物語っている。
9月28日にホームで行なわれたマインツとの試合では、公式戦で4連敗中の相手に先制点を許す苦しい戦いとなった。細貝はこの日も中盤の底の守備的なポジションでプレーしていたが、0-1とリードされたまま後半を迎えると、細貝はリスクを冒して積極的に前に出て行った。ホームで点を獲りに行く。強烈なメッセージだった。チームは後半に3点をとって逆転勝利をつかんだ。
「もちろん自分に与えられた役割があるなかで、自由に動いていいという『余地』も与えられているんです」
そう話す細貝は、昨シーズンとの違いを強調する。