欧州サムライ戦記BACK NUMBER
残留の立役者がまさかのベンチ生活。
吉田麻也が再び救世主になるために。
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byGetty Images
posted2013/09/21 08:02
「こっからまたレギュラー争い頑張ります」と自身のブログでも宣言している吉田。W杯予選での仕事が一段落した今、サウサンプトンでの定位置復活が待たれる。
4試合で2失点と上々のスタートに見えるが……。
また、吉田がロブレンのパートナー争いで遅れをとったことも明らかだ。確かに、コンフェデ杯出場と続く休養により、クラブでの始動開始が遅れたという仕方のない理由ではある。とはいえ、開幕直前のタイミングで行なわれた代表戦で、コンディション不足とミスを披露してしまっては、対照的に「充実したプレシーズンを過ごした。(ロブレンとは)初日から波長が合った」と言うフォンテを前に、ポチェッティーノが吉田の調整を急かせなくても不思議はない。
同時に指揮官には、失点への警戒心を強めて開幕に臨んだ節もある。ボールを支配して攻めるスタイルを信条とするとはいえ、昨季のリーグ戦60失点は、最下位で降格したQPRと同数という酷さ。前監督が残留争いに巻き込まれたのは、開幕4試合を計14失点の4連敗というスタートの時点で決まってしまったようなものなのだ。
前任者の轍を踏むまいとする意識は、右SBとして攻撃的なナサニエル・クラインではなく、守備優先のカラム・チェンバーズが、開幕から3戦連続で先発起用されたことからも窺い知れる。ロブレンとフォンテを中心とする最終ラインは、開幕4試合で僅か2失点。『テレグラフ』紙の採点によれば、両CBの出来は、平均で10点満点中6.9点と悪くない。監督にすれば、コンビを変える理由はないということになる。
守備の真価が問われる、強豪との対戦。
だが、吉田自身がコメントしているように「焦る必要はない」と言ってよい。返り咲きのチャンスは、ほどなくして訪れるはずだ。心の拠り所は、失点数が抑えられている一方で、得点数も第4節まで2点に留まっているという現実。
対戦相手の強度は、昨季8位のウェストブロムウィッチとの開幕戦(1-0)が最高という4試合で、1勝1敗2引分けに終わっている。ポチェッティーノが攻撃志向の監督であること以上に、「トップ6入り」の野望を抱くオーナーが、新FWのパブロ・オズバルド獲得に約23億円の出費を許していることを考えれば、納得できる滑り出しではない。
今後は、否が応でも勝利と3ポイント獲得への意識が更に強まると思われるが、第5節のリバプールくらいしか強豪との対戦が見当たらない開幕2カ月間とは違い、続く10月後半からの2カ月間には、第8節のマンチェスター・ユナイテッド戦を皮切りに、昨季トップ4の全てと当たることになる。
敵が引いて守る時間帯も長かった開幕4試合とは異なり、自軍が攻め込まれる時間帯が増えるだろう。つまり、今季の守備力が本当に試されるのはこれからだ。