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知将トゥヘルはマインツの太陽だ。
岡崎慎司が感銘を受けた手腕を追う。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byBongarts/Getty Images
posted2013/09/05 10:30
トゥヘル(左から2番目)は岡崎を「本物のFWだと思う」と評価。昨シーズン終了後、チーム得点王のアダム・シャライがシャルケに移籍したこともあり、岡崎に対する期待は大きい。
岡崎が感銘を受けた、セットプレー対策とは。
そして、3つ目が、相手の長所を消す、徹底したスカウティングだ。
弱者としての戦いを心得ており、試合ごとにメンバーもフォーメーションも変える。今シーズンは、サイドのFWとしてN・ミュラーと岡崎を配して、中央の最前線よりやや下がり目の位置にボランチが本職のモリッツを起用する、変則的な3トップとも0トップともいえる布陣で、相手の長所を消しながら戦うことも少なくない。岡崎は、フライブルク戦でのセットプレー対策に感銘を受けたという。
「フライブルクなんかは、ショートコーナーをやるときの(独特な)形があって、(簡単には)止められないんですよ。FKとかのセットプレーもそう。シュツットガルトにいたときなんかはそのあたりを分析していなくて試合中に選手が怒られるということがあったんですけど、マインツは事前のスカウティングがしっかりしていて、ちゃんとセットプレー対策をやっていますね」
ケディラ、ホルトビー、そしてミュラーを育てる手腕。
最後に挙げられるのが、選手を成長させる手腕だ。
シュツットガルトのU-19監督を務めていたときには、現在はレアル・マドリーでプレーするケディラを育て上げた。プレーはもちろんだが、トゥヘルはケディラにリーダーシップがあることを見抜いて、さらなる成長をうながした。ノイアー、エジル、フンメルス、ヘベデスなどを擁して優勝を果たした2009年のU-21欧州選手権で、チームをまとめあげたのはキャプテンのケディラだった。
あるいは、期待されながら伸び悩んでいたホルトビーには練習に取り組む態度を改めさせ、'10-'11シーズンにはドイツ代表へ送り込んだ。そして、現在はチェルシーでプレーするシュールレを育てたことでも知られている。かつて、シュールレはこう話していた。
「監督の指示やアドバイスは的確で、すごくわかりやすいんです。二言、三言で言いたいことを伝える能力を持っているんですよ」
現在、トゥヘルのもとで、目覚ましい活躍を見せているのがN・ミュラーだ。昨シーズンオフに初めてドイツ代表入りしたこのFWは、第4節を終えて5ゴールを決め、得点ランキングトップタイにつけている。
マインツは第4節でハノーファーに敗れてしまい、開幕4連勝こそならなかったが、トゥヘル監督は自信を口にする。
「我々は、驚くべき成長を遂げることも可能だよ」
バイエルンとドルトムントの力が抜けており、退屈になるかと思われた今シーズンをかきまわしてくれそうなのは、トゥヘル監督が率いるマインツだ。