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知将トゥヘルはマインツの太陽だ。
岡崎慎司が感銘を受けた手腕を追う。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byBongarts/Getty Images
posted2013/09/05 10:30
トゥヘル(左から2番目)は岡崎を「本物のFWだと思う」と評価。昨シーズン終了後、チーム得点王のアダム・シャライがシャルケに移籍したこともあり、岡崎に対する期待は大きい。
51年目を迎えたブンデスリーガで、今季、開幕から3連勝を飾ったチームが4チームあった。優勝候補のバイエルンと、対抗馬に挙げられているドルトムントとレバークーゼン。そしてマインツだ。
Transfermarkt.deによればマインツの選手の推定市場評価額は4060万ユーロで、リーグで下から数えて3番目。トップのバイエルンの約12分の1に過ぎない(テータは9月1日現在)。
資金力に恵まれないマインツが、開幕から好スタートを切れた最大の理由はトーマス・トゥヘル監督の存在にある。
「将来のドイツ代表監督として推せるのは、クロップ監督とトゥヘル監督だ」
現在のドイツ代表を率いるレーブも、かつてそう語っていた。
選手としては芽が出なかったトゥヘルは、育成に定評のあるシュツットガルトのU-19の監督として名を馳せると、その手腕を買われてマインツのU-19監督に就任。'09-'10シーズンの開幕直前に前監督が解任されたことで、急遽トップチームを率いることになった。
選手と同じ目線でチームを団結させる。
そこから4シーズンの成績は、9位、5位、13位、13位。過去最高の5位となったあとには、シュールレ(現チェルシー)、フクス(現シャルケ)が移籍し、シャルケからのレンタル移籍だったホルトビー(現トッテナム)も去ったために、確かに順位は落ちた。それでも、資金力の乏しいチームを率いながら、一度も本格的に残留争いに巻き込まれずに安定した戦いを続けてきたことは特筆すべきだろう。
彼の魅力は、4つある。
1つ目が、選手と同じ目線に立って考えることで、チームを団結させることだ。
トゥヘルはシーズンの開幕前、選手にアンケートを実施する。質問項目は「監督やスタッフに求めること」や「自分たちの目指すサッカー」など多岐にわたる。そして、質問項目を集計した上で、選手たちと話し合いをしながらそれぞれの項目について答えを導いていくのだ。