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俺たちのJリーガーをなめんなよ。
柿谷曜一朗が“推される”理由。
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byAFLO
posted2013/08/31 08:01
尊敬する森島寛晃からの慰留を受け、海外からのオファーを断って「セレッソの8番」を背負うことを選んだ柿谷曜一朗。彼のJリーグへの愛は、日本サッカーにとって重要なものであるに違いない。
柿谷が多くの人に“推される”本質とは。
フランス戦でとんでもないループシュートを決めたU-17W杯での活躍など、誰もがロンドン五輪世代の中心は柿谷だと思っていた。だが次第にその才能は輝きを失せ、度重なる練習遅刻などで、セレッソ大阪からJ2徳島ヴォルティスに放り出されながらも、そこから自分を取り戻して這い上がっていく。
将来を有望視された若者が、一度自分を見失いながらも取り戻していくたくましさが、周囲の期待値と重なっていったのかもしれない。前回の南アフリカW杯に向かう過程で本田圭佑が台頭してチームに新しい風を吹き込んだ姿を、柿谷にダブらせてしまう側面もあるようには思う。
しかし、これらばかりが理由ではない気がするのだ。強烈な“柿谷推し”の本質は、もっと違うところにあるのではないか、と。
筆者が感じているのは、柿谷の「クラブ愛」にその本質があるように思えてならないということだ。
ピンクの血と言い切るほどの帰属意識、クラブ愛。
彼はいつも代表を語る前に、まずセレッソがあることを忘れていない。柿谷の発言には、必ずと言っていいほど「セレッソ」という言葉が出てくる。
昨季、セレッソ大阪復帰1年目で2ケタゴールをマークした彼にインタビューをした際、このような言葉を残していた。
「徳島に移籍したとき(セレッソから)離れることはないと思っていたので悔しいというか、でも離れざるを得ないというか……。離れるべきやと思った以上、環境を変えたことに後悔はありませんでした。(徳島に)行っていないと自分自身、終わっていたと思うし。徳島には本当に感謝しています。でも大袈裟に言ったら、自分に流れている血はピンクなんです。外に出てみたからこそ、自分はセレッソにおりたいんやという気持ちを分かれたと思う。それを分かっただけでも、すごい大事な2年半やったな、と思っているんです」
流れているのはピンクの血と言い切れるまでの帰属意識、チーム愛。だからこそ今の活躍につながっている。
いくら活躍しようとも、A代表に入ろうとも、そのスタンスに変わりはない。東アジアカップを制した後も、彼は「この優勝をセレッソに持ち帰って、優勝した気持ちであったり、その良さであったりをみんなに伝えて、それがセレッソでできたら最高なことだと思っています」と語っている。常にセレッソが頭にあり、そこで活躍してこその代表という姿勢も崩れることはない。