野球善哉BACK NUMBER
優勝候補が次々消え、ついに常総も。
深紅の優勝旗は東北へと渡るのか?
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byHideki Sugiyama
posted2013/08/20 12:15
常総ナインは自分たちの判断でマウンドに集まり、相談し、戦い方を決める。敗れたとはいえ、その大人びたプレーぶりは大会でも突出していた。
まさかの展開だった。
8月19日の準々決勝第3試合、常総学院(茨城)vs.前橋育英(群馬)は9回裏を迎えて、常総学院が2-0でリードしていた。
前評判を考えても、本大会に入ってからの戦いぶりを振り返ってみても、このまま常総学院が強さを見せつけて、ベスト4に名乗りを上げるはず――この試合の原稿のイメージは試合終了前にして、ほぼ完成していた。
ところが、ここからドラマは起こった。
「7、8回くらいから異変を感じていました。いつもの飯田らしくないなぁと。ボール自体も良くなかったですから」
常総学院・佐々木力監督が、試合途中からエースに感じていた小さな異変は、熱中症からの降板という最悪の結末となった。
ここまで3試合を1人で投げ抜いてきた常総学院のエース飯田晴海が、9回裏になって右足をつり、一旦ベンチに下がった。飯田は再びマウンドに戻ったものの、2球を投げただけで再びベンチへ。「最初は交代させるつもりでしたが、飯田が行かしてほしいというので、続投させました。足をつることがないようにと試合中も気をつけていたんですけど、ああいう形になってしまうとは……」と佐々木監督はうめくようにコメントした。
飯田に代わって、登板した2年生の金子雄太は2死までは簡単にとったものの、最後の打者と思われた前橋育英の5番小川駿輝の二塁ゴロが、常総学院の二塁手だった進藤逸のグラブの手前でイレギュラー。小川はからくも出塁した。
「野球の怖さを改めて痛感しました」
続く板垣文哉が右翼線二塁打を放って二、三塁とすると、7番高橋光成が同点三塁打。9回の時点では前橋育英の反撃をなんとか同点にとどめたものの、10回裏、1死二、三塁から3番の土谷恵介に中前適時打を浴び、常総学院は敗れた。
「9回2死からのセカンドゴロがイレギュラーしたのは見えたのですが、運がなかったなぁと。野球の怖さを改めて痛感しました」
9回裏のできごとを説明する佐々木監督の言葉に、力はなかった。