ブンデスリーガ蹴球白書BACK NUMBER
「勝っているチームはいじるな」の
格言をグアルディオラは覆せるか?
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byBongarts/Getty Images
posted2013/08/08 10:30
ドルトムント戦でロッベンに指示を送るグアルディオラ監督。監督の哲学は徐々にチームに浸透しているのか、アウディカップのサンパウロ戦の後には「選手がこれほど早く私の細かいアイディアを実行してくれているのには驚きを感じているよ。とてもインテリジェントなチームだと思う」とコメント。
浸透には時間がかかる、ボール奪取エリアの意識。
今後の課題となるのは、大きく分けて2つある。
1つ目が、守備の問題だ。
ここまでアンカーのポジションには。ドイツ代表でこのポジションをこなすことのあるシュバインシュタイガーだけではなく、トップ下を本職とするクロースがたびたび起用されている。
グアルディオラは「彼のような複数のポジションでプレーできる選手が私は好きなんだ」と話しているが、アンカーの両脇のスペースを使われて、ミドルシュートを許したり、スピードに乗ったドリブルで破られる場面が多い。それでも監督はためらうことなくクロースをこのポジションで起用している。守備的な選手ではなく、展開力のある彼を起用するのは、このエリアでボールを奪うことを目的としていないからだろう。むしろ、もっと前でボールを奪いたいはずだ。
プレシーズン中に目に付いたのは、プレー中に2列目の選手を呼びとめ、プレッシャーのかけ方について厳しく指摘する姿だ。
バルセロナ戦では相手キーパーがボールを持ち、攻撃を始めているにもかかわらず左サイドにいたロッベンを呼び止め、プレスのかけ方について細かく指示を送っていたし、アウディカップでは右MFのミュラーを烈火のごとく叱りつけていた。
どの位置からどの方向にプレスをかけるのか、まだ選手たちに浸透させきれていない部分がある。攻撃力で押し切れるブンデスリーガでの試合はともかく、来月から始まるCLレベルになるとこの隙を相手チームが見逃すことはないはず。守備については、まだまだ改善の余地がある。
若手が食い込む余地がない主力陣。
もう一つが、若い戦力が台頭する予感が希薄な点だ。
グアルディオラはトップチームだけではなく、U-23やU-19の試合の映像もチェックして、才能の発掘に努めてきた。バルセロナの監督時代には若手のブスケツやペドロをトップチームで重用し、スペイン代表にまで育て上げたが、彼らのようなレギュラーをおびやかせるタレントが出てくる気配が今のバイエルンには感じられないのだ。
昨シーズン3冠を達成した際の主力がそのまま残り、2500万ユーロでバルセロナから獲得した秘蔵っ子のチアゴはすでに攻守のキーマンになりつつあるため、若手がポジションに食い込んでいく余地が少ないのは当然なのだが、この点にやや物足りなさが残る。