MLB東奔西走BACK NUMBER
先発完投主義は高校野球が原点?
米国から届いた問題提起とは。
text by
菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi
photograph bySports Graphic Number
posted2013/08/02 10:31
スポーツ専門局ESPNの『Outside the Lines』の一場面。T.J.クイン記者が日本球界に投げかけた問題は、日米の野球に対する考え方の違いを改めて浮き彫りにした。
先発完投を理想とする日本野球。
日本の先発投手の理想像は、まさに高校野球に原点があるように思う。
とにかくチームのために球数など関係無しに連戦連投し、勝利をもたらすことが最優先となる。
このスタイルがそのまま大学やプロ野球にも反映されているから、現在も日本では“先発完投”が重要視され、投球内容が悪くない限りは、球数に関係なく続投が基本となる。
だがメジャーに挑戦するとなると、まったく話が変わってくる。
何度かこのコラムで紹介しているように、メジャーでは厳格な球数制限が存在する。たとえ相手チームを圧倒する投球を続けていようとも、ノーヒットノーランなどの快挙が絡まない限り、どんな投球であっても降板を命じられるのだ。
球数制限で7回を投げきれずにいるダルビッシュ。
これまで野茂英雄投手を筆頭に、石井一久投手、松坂大輔投手など、日本では四球や球数を気にせず先発完投を常としてきた投手たちは、やはりメジャーにおいて、少ない球数で安定して長いイニングを投げることに苦労してきた。
そしてダルビッシュ有投手もその1人だろう。
7月27日のインディアンス戦が顕著な例だが、6回を投げ、3安打1失点11奪三振。球数は123球。
右僧帽筋の張りでの故障から復帰後、2戦目ということも影響しているだろうが、これだけの内容で球数が少なければ、日本ならば間違いなく続投というケースだ。
今シーズンもここまで球数が120球を超えたのはわずか3試合。メジャー平均の100~110球に制限されている状況下で、ここ最近6試合は7回を投げ切れていない。奪三振数の多さとは裏腹に、なかなかイニング数が増やせない状況が続いている。
そして高校野球の影響は先発投手の投球スタイルだけに留まらない。
実は選手生命にもマイナスの効果をもたらしている可能性がある。