MLB東奔西走BACK NUMBER
先発完投主義は高校野球が原点?
米国から届いた問題提起とは。
text by
菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi
photograph bySports Graphic Number
posted2013/08/02 10:31
スポーツ専門局ESPNの『Outside the Lines』の一場面。T.J.クイン記者が日本球界に投げかけた問題は、日米の野球に対する考え方の違いを改めて浮き彫りにした。
高校時代に投げ続けることの影響は?
というのも、今年3月、メジャーの選手育成の実情を知るため、ドジャースのフロント陣にインタビューをした際、昨年まで国際スカウトのトップだったローガン・ホワイト氏(現在はアマチュア・スカウト部門の副社長)はこう語っていた。
「マツザカ(松坂大輔投手)は高校野球史上最高の投手だったが、その反面とにかく投げ続けた。その一方でサイトウ(斎藤隆投手)やクロダ(黒田博樹投手)は高校時代エースではなく、サイトウに至ってはファーストだった。彼らは高校時代に投げ続ける必要がなかった。そして今、40歳前後になっても投げ続けているのは一体誰なのか? クロダとサイトウだ。そして現在のマツザカの状況を考えて欲しい」
このホワイト氏の発言は、ドジャースがドラフト指名選手の育成プログラムを作成する際に、各選手の過去3年間のアマチュア時代の戦績をモニタリングし、無理をさせず徐々にプロとしての経験を積ませていくというプランを語る中で説明してくれたものだ。
米国ではアマチュアでも先発投手の管理が厳格化。
残念ながら彼の発言を実証できる確固たるデータを提示することはできない。だが、現在も38歳ながら中継ぎ、抑えとして大車輪の活躍を続けている上原浩治投手も高校時代は控え投手だったというのも事実だ。
多くの日本の投手たちがメジャーに挑戦しているが、40歳前後になっても世界最高峰の舞台の第一線で活躍をしている投手は、いずれも高校時代に登板過多ではなかった。この事実を、単なる偶然として片づけてしまっていいのだろうか。
日本とは違い、米国ではメジャーだけでなくアマチュア球界でも先発投手の管理が厳格化している。
指導者も選手たちに絶対に無理はさせないし、有望選手であればあるほど彼らの将来を重視する。アマチュアの頃から登板間隔、球数制限を設けられた環境の中でプレーを続けているので、それに応じた投球術が磨かれ、プロに移行しても順応しやすくなっている。