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8年ぶり前半戦負け越しの日本ハム。
栗山監督の「のたうち回る」技術。
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byHideki Sugiyama
posted2013/07/22 12:10
栗山監督は自身初となった借金1での前半戦終了について「一時期の苦しい状況を考えれば、選手が頑張ってくれた。後半戦で勝負できるところに来ている」と語った。
40勝41敗1分――。
日本ハムが前半戦を借金で折り返したのは、2005年以来、実に8年ぶりだった。
昨年のパ・リーグ覇者は、とにかく苦しんだ。
西武との開幕カードを1勝2敗と負け越すなどスタートダッシュに失敗。5月4日の西武戦から悪夢の9連敗を喫して借金は最大で10にまで膨れ上がり、最下位に沈んだ時期もあった。
原因の一端を挙げるとすれば、昨季の勝ち頭である吉川光夫をはじめとする先発投手陣の不調。それでも借金を1に押さえられたのは、攻撃陣が奮闘したからだった。
1番の陽岱鋼や4番の中田翔が安定した成績を残し、新加入の大引啓次とアブレイユ、そして、ゴールデンルーキーの大谷翔平も機能。彼らの活躍で、一時は借金を完済するなど傷口は最小限にとどめることができた。
投打のバランスが噛み合わず、浮き沈みの激しい戦いが続いた現実を噛みしめるように、栗山英樹監督は前半戦を端的にこう総括した。
「のたうち回った」
相手投手の“ボーク癖”を指摘するなど、ペースを握らせない工夫。
しかしながら、昨年、監督就任1年目にしてチームを優勝へと導いた指揮官である。苦悩が続いた前半戦のなかでも、意味のある“のたうち回り”を見せていた。
6月9日のヤクルト戦でのそれは、実に見事だった。
2対1でリードしていた4回。無死一、二塁から8番・大野奨太の打席で栗山監督がベンチを飛び出し、球審に何かを告げる。
「(セットポジションの際に)しっかりと止まっていないことがたまにあったから、一応、それを伝えただけ」
指揮官は、相手先発ラルーのボークを指摘したのだ。この作戦が奏功。その後大野が安打で続き、結局この回、打者一巡の猛攻で5点を奪い勝利をものにした。
試合後、栗山監督はしてやったりの表情を浮かべながらこう話していた。
「ボークがあるピッチャーだということは分かっていたし、いかに自分のペースで投げさせないかが大事だと思った。だから、戦術としてそういうこともやっていこうとは、試合前から思っていた」