Sports Graphic Number SpecialBACK NUMBER
<ボールなんて関係ない> トニ・ブランコ 「55本を超えてゆけ」
text by

中村計Kei Nakamura
photograph byYoshiyuki Hata
posted2013/07/22 06:00
特大アーチで野球人気を牽引してきたのは間違いなくこの男だ。
新天地で復活した、魔神の如きブランコの豪打に刮目せよ!
酸素カプセルで横になっているときだった。
目を開けると西武の菊池雄星が帽子を取って頭を下げていた。前日、5月28日に受けた死球を詫びていたのだ。トニ・ブランコは顔の前で両手を振り「問題ないよ」と伝えた。とびきりのスマイルをそえて。
ブランコは当てられても怒らない。
「それが野球だから。僕の中では、ケンカをしないというのもプロフェッショナルであることの条件のうちのひとつなんだ。僕と同じドミニカ生まれのプホルス(エンゼルス)や、オルティース(レッドソックス)もそうだろう。偉大な選手ほど、怒ってもそれを態度に出したりしないものだ」
ブランコは打てば打つほど当てられる。来日1年目、39本塁打をマークした2009年は14死球も受けた。打撃好調の今年も死球はすでに7個を数える。これはリーグトップの数だ(7月3日現在)。
投手に恐怖感を植え付けられるよう、ブランコは日本に来てからバットを頭上に掲げ、アメリカ時代より大きく構えるようにした。
しかし横浜の野手総合コーチ、二宮至はこう感心する。
「体つきとか雰囲気は怖いイメージがあるけど、性格は本当に温厚。それに当てられて怒るってことは、インコースを嫌がってるってことをアピールしているようなもんだからね。そうしたら相手はますますインコースを突いてくる。投げさせないためには怒らないことがいちばんいいんだよ。トニは頭がいいから、それをわかってるんだと思う」
こちらは雑誌『Number』の掲載記事です。
NumberWeb有料会員になると続きをお読みいただけます。
残り: 3022文字
NumberWeb有料会員(月額330円[税込])は、この記事だけでなく
NumberWeb内のすべての有料記事をお読みいただけます。
