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8年ぶり前半戦負け越しの日本ハム。
栗山監督の「のたうち回る」技術。  

text by

田口元義

田口元義Genki Taguchi

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photograph byHideki Sugiyama

posted2013/07/22 12:10

8年ぶり前半戦負け越しの日本ハム。栗山監督の「のたうち回る」技術。 <Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

栗山監督は自身初となった借金1での前半戦終了について「一時期の苦しい状況を考えれば、選手が頑張ってくれた。後半戦で勝負できるところに来ている」と語った。

楽天・田中への対策は空振りに終わったが……。

 相手が来日してからまだ2回目の登板と経験の少ないラルーだからこそ、その効果が発揮されたともいえる。しかし、栗山監督は相手投手が誰であっても投手のペースで投げさせないことを意識していた。

 7月9日の楽天戦でものたうち回って見せた。

 '11年8月7日に勝って以来、攻略できていない田中将大に対し、右打者はシュート、左打者はカットボール、スライダーと、極端に的を絞らせた。

 だが、結果的には右打者にカットボール、左打者にはシュートと真逆の投球で翻弄され、散発4安打の完封負け。結果的に田中は攻略できなかったが、大事なのは戦術を貫き通すこと。いくら相手が開幕から連勝記録を続ける難攻不落のスーパーエースであったとしても、指揮官は決して揺らぐことはない。

「いい流れを引き寄せられるなら何でもしようと思っている」

 栗山監督は借金返済が間近に迫ってきた頃、自分の信念をこう述べた。

「試合のなかでこっちのミスもあれば相手のミスもあるし、いい試合をしていても勝ちに繋がらないこともある。だけど、いい流れを引き寄せられるなら何でもしようと思っている。後になって振り返った時、『こうしておけばよかった』と思いたくないから」

 前半戦の「のたうち回り」は、いわば後半戦へいい流れを作るための布石。だから、前半戦終了時に借金1という結果でも、栗山監督は常に前を向き続けられるのだ。

 今の日本ハムには、指揮官のブレない戦術と安定した打線がある。しかし、連覇を果たすためには、もうひとつピースが足りない。

 軸となる先発投手だ。

 ダルビッシュ有が抜けエースの空洞化が囁かれた昨年は、吉川が14勝とブレークを果たし優勝の原動力となった。今年も優勝を目指すためには、これは必須要項といえる。

 現在、ウルフや新加入の木佐貫洋が粘りを見せているといっても、6勝7敗と負け越している吉川をはじめ全体的にピリッとしていない。

 そんな現状を打破してくれるとすれば……。おそらく、ベテランの武田勝をおいて他にはいないだろう。

【次ページ】 修正能力の高い武田勝にかかる期待。

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