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メジャーの短期決戦は中2日登板も。
CS&日本シリーズを変える名将は誰?
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byNaoya Sanuki/Hideki Sugiyama
posted2010/10/17 08:00
両リーグの覇者、中日とソフトバンクはともに投手力で勝ち上がってきたチーム。これからの短期決戦では勝ちにこだわった選手起用が試されることになる
1勝に全力を尽くすのが短期決戦のセオリーだが……。
もちろんこれ、という答えがあるわけではないが、日本ではメジャー流の投手起用を試みること自体が、どうもご法度のようでもあるのだ。
昨年の日本シリーズで日本ハムの梨田昌孝監督は、2勝3敗で迎えた第6戦の先発にローテーション通りに初戦で先発して負け投手となった武田勝投手を起用した。腰と臀部のケガから癒えたばかりという事情もあったが、第2戦に先発して勝ち投手となったダルビッシュ有投手を起用しなかった。そのことに、メディアを含めて、評論家の間からもあまり疑問の声もわかなかったことを記憶している。
メジャーでは最も日本的な選手起用をするジョー・トーリ前ロサンゼルス・ドジャース監督が、ヤンキース監督時代に同じ投手起用をしている。
2006年のデトロイト・タイガースとの地区シリーズで1勝2敗と後がない状況でも、エースのワン・チェンミン投手を中3日で使わずに敗れた。
このときトーリ監督は「われわれはあと2試合勝たなければならないからだ」と説明したが、翌2007年のクリーブランド・インディアンスとの地区シリーズでは、まったく同じシチュエーションになると中3日でワンを先発させた。
2つの経験からトーリ監督が導き出した正解は、目の前の1勝がなければ先はない、そのためにあるものはすべてつぎ込むべきだ、ということだったわけだ。
短期決戦の新戦法を編み出した監督が日本球界を変える。
さて、日本球界も短期決戦の季節だ。
10月に入ってクライマックスシリーズがたけなわとなり、ここを勝ち上がったセ、パ両リーグのチームによって10月30日から日本シリーズが開幕する。
性善説の監督たちが多い中で、今年の短期決戦では“日本の常識”を打ち破るような投手起用、選手起用を見せてくれる指揮官が現れないものだろうか。その監督が日本一を手にしたとき、日本の野球はもう一つの新しい楽しみを手にするような気がする。