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競馬の世界にもアベノミクス効果!?
セレクトセールに見るターフの未来。
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph byJRHA
posted2013/07/13 08:01
2億4000万円で落札されたアゼリの2013(左)。落札した(有)デスクバレットの田辺滋久氏は「国内のGIレースを目指す」とコメントした。
1歳馬のほうが売れるのは今や世界的な傾向に。
一方、初日の1歳馬セッションでは、同じディープ産駒で、GI3勝馬スイープトウショウの仔、スイープトウショウの2012が話題になっていた。しかし、8000万円からスタートしたものの意外と値は上がらず、最終的には1億円で落札された。
血統のわりに価格が伸びなかった(といっても億なのだが)のは、背中がたれたように見える馬体が今ひとつ評価されなかったせいかもしれない。しかし、馬体は成長するにつれて変わってくるし、姿形だけで競走能力が決まるわけではない。早ければ来年の夏にはデビューするので、今後も見守りたい。
セレクトセールが初めて行われた1998年には当歳馬と1歳馬のセッションがあったのだが、翌'99年からは当歳馬のみになった。
庭先取引(セリなどを通さない取引)が中心だった日本の競馬界には、「いい馬は当歳のうちに買い手がついてしまうので早く買うべき」という「当歳馬信仰」が根づいており、1歳や2歳は「売れ残り」のように見られがちだったことも影響していたと思われる。
ところが、'06年のセレクトセールから1歳馬のセッションが復活し、'10年には当歳208頭、1歳214頭と頭数で1歳馬のほうが多くなり、翌'11年からは売却総額でも1歳馬が当歳馬を上回るようになった。
デビューまでの期間が短い1歳馬の取引のほうが盛んなのは世界的な傾向である。なので、これはリスクを避ける「不況対応型」の売れ方というわけではない。
セレクトセールの累年売り上げは、最高落札額が1億1200万円、平均価格2068万8217円と過去最低だった2010年からV字回復しようとしている。
そうして上向いているところにアベノミクスの追い風が吹いた、というところか。
好調の要因はディープだけでない日本産種牡馬の底上げ。
主催者の日本競走馬協会で副会長をつとめる吉田照哉・社台ファーム代表は、かつて3日間の開催で記録された売り上げを2日間で更新した、今年の盛況ぶりに満足げな様子だった。
「アベノミクス効果もあったと思います。ディープインパクト以外の種牡馬も信頼されてきて、全体的なレベルが上がった感がある。下見に来るお客さんが多くなり、外国の新しい馬主さんも増えましたね」
思いっきり単純化した計算だが、アベノミクスによる円安のため、海外のバイヤーにしてみると、昨年は100万ドルで8000万円の馬しか買えなかったのに、今年は1億円の馬を買うことができるようになったわけだ。
そんななか、ヴィクトワールピサが'11年のドバイワールドカップを勝ったり、オルフェーヴルが昨年の凱旋門賞で、一度は圧勝かと思われた2着に惜敗するなど、レベルが上がっている日本産馬を安く買えるのだから、食指が動いて当然だろう。