コンフェデ杯通信BACK NUMBER
試合を変えたネイマールの全力疾走。
若きセレソン、ウルグアイ戦の果実。
text by
豊福晋Shin Toyofuku
photograph byTakuya Sugiyama
posted2013/06/27 11:55
「(ウルグアイ戦は)今回の大会で最も出来の悪い試合だった」と試合後にコメントしたネイマール(右)。「でも今日の試合は、このチームが成熟するいい経験になったと思う」
試合の流れを変えた、ネイマールの全力疾走。
フォルランのキックをブラジルのGKジュリオ・セザルがセーブしたこの場面以降も、流れはウルグアイにあった。試合を変えたのはネイマールが見せた一本の走りだ。
前半終了間際、ウルグアイの裏のスペースをめがけて全力で走り込んだのは、「足下でボールを要求しすぎる」との批判もあったネイマールだ。
中盤でボールを持ったネイマールは一度味方に預け、そこから裏のスペースへ向けてボールを呼び込みながら走る。自らが引き出したロングボールを胸で華麗にトラップし、DF2人を振り切りGKを越すシュートを放つ。こぼれ球を押し込んだのはフレッジだ。
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「ネイマールは足下でボールを操るだけじゃなく、チームのひと駒としてもプレーできる」
スコラーリがかばってきたエースが、再び決定的な仕事を見せた先制点だった。
先制点を決めてもプレーが安定しない、“若き”セレソンたち。
健闘するウルグアイを前に先制点を決めたブラジル。例えばスペインであれば、ここからボールを回して試合をコントロールしていたことだろう。ドイツだったらフィジカルとスピードで相手を凌駕したはずだ。
しかしブラジルは先制点の後も、上手く試合を決めることができなかった。この辺りに、現在のセレソンの若さが見え隠れする。
スコラーリは試合をこう振り返っている。
「我々はもっと学ばなければならない。もっと簡単にプレーするべきだった」
後半3分のカバーニの得点は、チアゴ・シウバが自陣エリア内でボールを繋ごうとして生まれたものだ。
攻撃の局面でも、スコラーリが求めるシンプルな、大人のサッカーはまだまだできていない。スコラーリはベンチ前で、「サイドに散らせ!」と何度も叫んでいたが、攻めが中央に偏ることも多かった。
フォルランやカバーニのシュートは観客の心臓を縮みあがらせた。そんな中、指揮官の采配が巧みだったのは、後半19分に地元ベロオリゾンテ出身のベルナールを投入し、スタジアムの流れを変えたことだろう。人気選手の登場にスタンドは再び沸き、ブラジルはリズムを取り戻す。
終了間際に続いたコーナーキック。ネイマールがファーに送ったボールをパウリーニョが押し込んだ時、ようやく人々は少しだけ安心することができたのではないか。2-1のスコアで試合が終わると、会場はほっとしたように選手に拍手を送っていた。