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エンゼルスの松井放出は決定的に。
来季のユニフォームはまさかの縦縞!?
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byKYODO
posted2010/09/21 10:30
9月15日時点でチームでトップとなる74打点の松井。しかし打率は.266、本塁打は18本塁でしかない
メジャーリーグはいよいよ大詰め。混戦のナショナル・リーグとは対照的にアメリカン・リーグはヤンキース、レイズ、ツインズ、レンジャーズでプレーオフ進出チームは決まるだろう。
そうなると必然的に、プレーオフ進出の望みが断たれたチームは来季の構想へと発想を転換せざるを得ない。そこで出てきたのが、
「エンゼルスは松井秀喜とは来季、契約する意向はない」
という報道だ。
これはメジャーリーグの公式ホームページmlb.comで報道されたもので、このホームページは広報的な色彩が強いから確度が高い情報と言える。
複数年契約のアブレイユが単年契約の松井に勝利!?
エンゼルスとしては松井にざっと「3割30本」を期待していた向きがあるから、今季の働きぶりに不満足だし、来季の構想としてレイズの俊足外野手クロフォードがフリーエージェント(FA)になるので、彼の獲得に乗り出す一方、現在はライトを守ることが多いアブレイユをDHで起用する方針を固めているようだ。アブレイユの今季の成績は松井よりもはるかに下だが、球団とアブレイユの契約は2012年(最終年はオプション)まで残っている。
つまりエンゼルスは契約に縛られ、アブレイユを使わざるを得ないのである。メジャーリーグの契約で大切なのは「需要」と「供給=選手」側のタイミングが一致することで、もしアブレイユが今季限りで契約が切れることになっていたら、松井が残留するチャンスもあったかもしれない。
“DH専門”の松井を受け入れるチームは?
来季の移籍先を予測する大前提として、松井は外野手ではなく、すでに指名打者としてしか見られていないことを指摘しておきたい。守れなくはないが、守備につかせた場合、リスクが高まるというのが各球団の見方のようだ。その観点からすると、指名打者制の無いナショナル・リーグへの移籍の可能性は相当低いものとならざるを得ない。
しかし、松井の指名打者としての市場価値は決して低くはないのが好材料である。指名打者のパフォーマンスの指標として重視されるOPS、出塁率と長打率を足した指標では.814とまずまずの数字を残している(.800を超えることがひとつの基準をクリアしたことになる)。
本塁打も今季の働きを見る限り、20本はなんとか計算できる。これならば十分にいくつかの球団は獲得に動くだろう(予算に見合った範囲で)。
そこで需要と供給を調べるために、アメリカン・リーグの指名打者の契約の状況を調べてみた。当然ながら、今季限りで契約が切れる選手のいる球団が移籍先の候補となる。