Jリーグ観察記BACK NUMBER
好調の名古屋&C大阪と、浦和の差。
答えは「外国人枠」と「GM」にあり。
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph byMasahiro Ura
posted2010/09/11 08:00
相手と競り合う名古屋FWケネディ。昨シーズン、ブンデスリーガのカールスルーエから加入した
外国人枠をどう制限するか――というのは、リーグの発展を考えるうえでとても大切なポイントだ。
イングランドのようにビザ発給を厳しくして外国人選手のクオリティーを保とうとする国もあれば、オランダやベルギーのように最低年俸を設けて粗悪な外国人選手を排除しようとする国もある。
ドイツの場合、ちょっと発想を変えて「チームに最低12人のドイツ人を登録しなければいけない」というやり方を採用している。つまり、実質的には外国人枠の制限がないということで、ポテンシャルを秘めた若手外国人選手が加入しやすく、これが近年のブンデスリーガ・ブームのひとつの要因になっていると言われている。
Jリーグの外国人枠は4人。フル活用しているチームの順位は?
では、Jリーグの外国人枠の「利用状況」はどうだろうか?
現在、Jリーグでは外国籍選手3人とアジアサッカー連盟加盟国選手1人を登録することを認めている。つまり外国人枠は3+1=4だ。
この4つの枠を現時点ですべて使っているJ1のクラブを調べてみたところ、10チームあった。そのチーム名を21節時点の順位とあわせて書くと、次のようになる。
1位名古屋、2位C大阪、6位G大阪、8位新潟、10位浦和、14位仙台、15位神戸、16位大宮、17位湘南、18位京都。
まず目につくのが、下位5チームすべてが外国人枠をフルで使っているということだ。これはシーズン開幕後に順位が上がらないことを受けて、夏場に補強をしたケースが多いためだ。彼らが外国人枠を余らせている13位FC東京と12位磐田をどう追い上げるかが、今後の見所になるだろう。現時点で大宮、神戸、仙台、FC東京が勝ち点21で並び、磐田の勝ち点は24。外国人1人の差が、最終的な順位に現れてもおかしくない。
名古屋とC大阪は外国人監督を起用して結果を出した。
今回注目したいのは、下位ではなく上位のグループである。
外国人を雇えるのは、選手だけではない。海外から名将を連れてくることも可能だ。選手の外国人枠をフル活用し、さらに外国人監督を招いているチームが、現在のJ1には3つある。名古屋(ストイコビッチ監督)、C大阪(クルピ監督)、浦和(フィンケ監督)だ。
そう、現在1位の名古屋と、2位のC大阪は、優秀な海外の人材に惜しみなく投資しているチームなのだ。名古屋のケネディは11ゴールを決めて得点ランキングのトップに立っており、C大阪のアドリアーノは8ゴールで8位につけている。残念ながらアドリアーノのレンタル期間は9月末に切れるが、間違いなく「当たり」の選手だった。本来ならここに鹿島(4位)も名を連ねるはずだったが、南アフリカW杯後に韓国代表の李正秀を引き抜かれて、アジア枠がひとつ空くことになった。きちんと補強をしているチームが上位に来ているのは、Jリーグの発展を考えるといい傾向だと筆者は感じている。