Jリーグ観察記BACK NUMBER
好調の名古屋&C大阪と、浦和の差。
答えは「外国人枠」と「GM」にあり。
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph byMasahiro Ura
posted2010/09/11 08:00
相手と競り合う名古屋FWケネディ。昨シーズン、ブンデスリーガのカールスルーエから加入した
チームを統括する敏腕GMが名古屋とC大阪を押し上げた。
ただし、このなかで浦和だけは“フル活用”しているにもかかわらず、優勝争いに絡むことができていない。名古屋やC大阪との差はどこにあるのだろうか?
ひとつ要因になっていると考えられるのが、GM(強化部長)の存在だ。
名古屋の久米一正GMはJリーグの強化責任者の先駆者のひとりで、これまで柏、清水の基盤を築き、すでに独自のGMマニュアルを確立。2008年に名古屋に引き抜かれ、ストイコビッチ監督の要望に応えて補強を進めてきた。ケネディらの年俸は決して安くないが、親会社を納得させるのもGMの手腕のうちだろう。
C大阪の梶野智強化部長は、北海道日本ハムファイターズの藤井純一社長から「将来のGM候補生」として経営学を叩き込まれたC大阪期待の人材だ。藤井氏はC大阪の社長時代、親会社のルートを使ってバイエルン・ミュンヘンに1カ月留学し、そのとき見聞きした名門の手法を梶野氏に伝授。梶野氏は2007年に強化部長になり、昨年C大阪をJ1へと昇格決定させた。
優秀なGMの不在が響く浦和。新GM柱谷幸一氏の手腕は?
それに対して浦和は、GMの整備が遅れている。2008年12月、解説者の信藤健仁氏をチームダイレクターに抜擢したが、初心者がいきなり通用するほど甘い世界ではなく、シーズン終了後にチームを去ることに。今季は元山形監督の柱谷幸一氏をGMに招いたものの、就任したのが昨年末だったことを考えると、その手腕が本当の意味で発揮されるのは来季以降と考えるべきだろう。今はまだ過渡期で、それがピッチの成績にも影響していると思われる。
プロリーグにおいては、外国人選手を含めて、上からも下からも人材がよどみなく流れ込むことが何よりの刺激になる。補強の量にも質にもこだわり、外国人枠をフル活用する名古屋とセレッソがタイトルを取るようなことになれば、もう一段階ステップアップした、新たな「Jリーグ基準」が生まれるのではないだろうか。