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日本代表に対する
第三者からの貴重な本音。
~世界が報じた日本サッカー~
text by
田邊雅之Masayuki Tanabe
photograph bySports Graphic Number
posted2010/09/14 06:00
『世界は日本をどう報じたか 日本がサッカーの国になった日』 木崎伸也著 KKベストセラーズ 724円+税
大きな話題を呼んだ今夏のW杯南ア大会。大会終了後には様々な書籍が出版されたが、ユニークな視点で注目を集めているのが、木崎伸也氏の『世界は日本サッカーをどう報じたか』である。
著者によれば、独自の手法は4年前の経験を下敷きに生まれたものだった。
「ドイツ大会の間、地元テレビ局の実況中継をチェックしてみたら、これが意外に面白かったんです。小さなコメントでもウィットに富んでいたりするし、当事者ではない『第三者』であるが故に、ざっくばらんな本音が出てくる。対戦国の解説者だと、試合を客観的に観るというよりは、どうしても自分たちの代表に関する発言が多くなりますから」
しかし南アで取材と移動を繰り返しながら一冊の本を仕上げていくというのは、容易な作業ではなかったはずだ。
「たしかに突貫作業でしたが、むしろ大変だったのは海外報道の紹介に終始せず、試合ごとの『テーマ』を抽出する作業でした。実際、南アでは移動などがハプニング続きだったこともあり、日本代表の試合がすべて終わった後で全体を振り返り、執筆する形にならざるを得なかった。とは言っても、編集担当者の方がはるかにきつかったと思いますが(笑)」
かくして見出された日本戦の「テーマ」は、次のような内容だった。
欧州の識者が日本の「組織サッカー」を評価しない理由。
「カメルーン戦は『組織』に着目しました。たとえばブラジルの解説者は組織的だと褒めたのですが、ヨーロッパの人間は評価しなかった。組織サッカーの伝統がないブラジルと違って、ヨーロッパの識者は日本の『組織サッカー』が、決断力のなさと表裏であることを見抜いていたためです。試合に勝ちはしましたが、自分も『このサッカーに未来はあるのだろうか』と漠然と感じていただけに、ヨーロッパ側の意見を聞いて、改めて背中を押されるような思いがしました」
続くオランダ戦は、テーマを見つけるのが最も難しかったという。
「これは結果をどう捉えるかにも関係していたと思います。最終的にはオランダ戦の失点を1に止めたことがグループリーグ突破へつながるわけですが、あの時点では、もちろんそんなことはわからない。なのに日本の選手は、あまりにサバサバしているように映りました。
そこでヒントになったのが、ドイツの解説者の『守る以外は何もしたくないチーム』という指摘でした。この言葉こそ象徴的ではないかと思い、『攻めて点を取るために必要な力』――『決定力』をキーワードに据えることにしたんです」