スポーツ・インテリジェンス原論BACK NUMBER
レスリングとスカッシュの一騎討ち!?
IOCが選ぶ五輪競技の“価値観”。
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byHochi Shimbun/AFLO
posted2013/06/10 10:31
女子レスリング五輪三連覇中の吉田沙保里はIOC理事会が行われたロシアのサンクト・ペテルブルクにメダル持参で乗り込み、ロビー活動を行った。
最終候補に残ったレスリング、スカッシュ、野球・ソフトボール。
この3つの競技団体は、2020年のオリンピックで生き残るために、どこも必死だ。
野球・ソフトボールは、一時、引退した松井秀喜に対し、活動依頼の要請を考えたようだが、最終的には全日本野球協会が断念した。
「ご本人に迷惑がかかるとよくない」
というのがその理由。どうも、根回しが不足していたようだ。
そもそも、野球・ソフトボールが最終候補に残ったのは「大穴」が来た! という感じだった。
野球・ソフトボールは漁夫の利を得ただけ。
最終候補を決める投票では、レスリングが一抜けした段階で、野球・ソフトボールには一票も入っておらず、同じ格闘技系である空手、武術との重複を避けるため球技である野球・ソフトボールが漁夫の利を得た形になった。
しかし、この両競技が復活する見込みは極めて低いと言わざるを得ない。
私の取材経験でいえば、ソフトボールにはオリンピックでもそれなりの「熱」があった。特に'08年の北京オリンピックでは、何も日本が金メダルを獲得したからというだけでなく、アメリカ、オーストラリアなどと一体になって醸し出した情熱があり、オリンピックにふさわしい競技に間違いはないと思った。
ところが、野球がいけない。空席がある。アメリカのトッププレイヤーが出場していないのも、バスケットボールや、冬のアイスホッケーと比べても見劣りしてしまう。
要は、いままでの開催で、しっかりとした実績を野球は示せなかったのだ。大きな票田であるヨーロッパで支援を期待できそうなのも、イタリア、オランダだけだ。
現実的にみて、あと3カ月での逆転は難しい。では、どの競技が有利なのか。
やはりレスリングである。