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<特別インタビュー>
謙虚でポジティブな男、細貝萌の決意。
「強い相手の時ほど、自分は活きる」 

text by

二宮寿朗

二宮寿朗Toshio Ninomiya

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photograph byToshiya Kondo

posted2013/05/28 10:30

<特別インタビュー>謙虚でポジティブな男、細貝萌の決意。「強い相手の時ほど、自分は活きる」<Number Web> photograph by Toshiya Kondo

「守備をベースにした戦い方が必要になってくる強豪国相手にこそ、ボランチで勝負したいという気持ちがあるので」と、ボランチというポジションへの意欲を語っていた細貝。

試合に出られなくとも腐らず、自らを高めていく方法。

 本職のボランチではないにせよ、せっかく奪ったレギュラーの座。対人に強い細貝の守備が、シュールレの負担を軽くしていたのは間違いなかった。レバークーゼン自体も好調を維持していた。

 しかしながら仕切り直しのウインターブレイク明け、細貝は再びベンチからのスタートに戻ってしまうことになる。監督の信頼を失ったわけでもない。だが細貝はやりきれない思いを膨らませることなく、気持ちを切り替えようとした。

――あのときはどんな思いを?

「チームもいい位置につけていたし、流れ自体も悪くなかったので自分のなかでも確かに悔しい気持ちはありました。でも誰を使うかというのは監督が決めることなんでどうしようもない。試合に出ていないとメンタルが厳しくなるけど、でもそれでコンディションが落ちてくるのはどうしても避けなきゃいけない。コンディションが落ちてくるのは、やはりメンタルが関わってくると思うんです。だからメンタルを保ちつつ、やれることをやらなきゃいけないなと思ったんです」

――具体的にはどんなことを?

「以前の自分なら、うまくいってないなと思うと練習を終えてすぐに帰ってました。でも今は逆で、たとえばクラブハウスに残って筋トレする時間を増やしたわけです。一番やったシーズンと言えるかもしれない。そういうのでメンタルを保って、モチベーションに多少なりともつなげられた感じがあるんです。すべての試合に出て、すべてがうまくいくのが理想ですよ。でもそういう厳しい状況でもやるべきことをやっていくことで自分は成長できてきたように思うんです。やれることをやっていけば、自然とポジティブになれるんだなってシーズン最後のほうになって確信が持てました」

ザッケローニ監督が高く評価することで、細貝もより一層強くなれた。

 2013年に入ってからはリーグ戦で先発の機会は一度もなかった。ベンチから外れることも少なくなかった。そんなときも外から見守るアルベルト・ザッケローニの視線は感じていた。

 指揮官は「出場機会を得られなくても腐ることなく成長を続けていった結果、監督の信頼を勝ち取った。それこそが選手の持つべき姿勢」とアウクスブルクからレギュラー争いが苛烈になるレバークーゼンへの復帰を評価するだけでなく、サブの立場から、それも本職とは違うポジションでレギュラーを獲ったことを絶賛していた。

 日本代表の一員としての自覚が、細貝のメンタルをより一層、強くさせていたのかもしれない。

 細貝は来季、アウクスブルク時代の恩師ヨス・ルフカイが監督を務めるヘルタ・ベルリンへの移籍を決めた。強豪レバークーゼンで成長している自負はあるものの、成長を実証するためにもボランチで勝負したいという思いがあったからだ。

――決断するのに迷いは?

「もちろんそれはありました。これは結果論ですけど、たとえ今回のような状況でも毎日の練習から中盤でプレーしていたら、移籍は考えなかったかもしれません。ただ普段の練習から、やりたいポジションでやる時間が凄く少ないというのは、やはりこれからを考えるとどうなんだろうって」

【次ページ】 チーム移籍を決断した、その真相とは?

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