詳説日本野球研究BACK NUMBER
桐光・松井裕樹を見るなら今のうち!!
大注目の春季関東大会、見所を紹介。
text by
小関順二Junji Koseki
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2013/05/16 10:30
5月3日の神奈川県大会準決勝で、1万5000人の観客を集めた桐光学園・松井裕樹。日大藤沢を相手に15個のアウトのうち、12個を三振で奪う圧巻のピッチングを見せる。
三塁からコンバートされた高田捕手のリードに不安なし。
春の戦い方を見て注目したのは高田のディフェンスである。選抜で守っていた三塁というポジションは極端なことを言えば、正面の強いゴロと、三塁線を襲う強いゴロだけに気をつけていれば務まる。しかし全体的な目配りと配球に腐心し、走者が出れば盗塁を防ぐ手立ても講じなければならない捕手というポジションが高田に務まるのか不安だった。
だが、そういう不安を高田は払拭した。絶対的な力を持たない山口と1年生左腕の江口奨理には低めと内・外のコンビネーションを徹底させ、イニング間には1.9秒台の二塁送球を相手校に見せることによって盗塁の意欲を失わせた。
春日部共栄戦では1回表、いきなり1番打者から3連打を浴びて1点を失い、さらに無死一、二塁というピンチの場面で電光石火の二塁けん制球を見せ、走者を殺している。選抜でマスクをかぶり続けた強肩捕手・西川元気も健在で、浦和学院のディフェンス陣の層の厚さは全国屈指と言ってもいい。
松井と鈴木のバッテリーを支える桐光学園の重量打線。
一方の桐光学園に目を向けてみよう。
このチームは松井のワンマンチームだと言う人がいるが、それはとんでもない誤解である。春前によく言われていたのが「松井のスライダーを捕球できるキャッチャーがいない」ということ。しかし、現在の松井は昨年夏に猛威を振るったスライダー、カーブ以外でもストレートにスピードとキレが増し、チェンジアップという新たな変化球も増えている。それらを何でもないような顔で捕球している鈴木航介は一級の技術を備えた捕手と言っていい。中学時代、青葉緑東シニア時代から松井とはバッテリーを組み、全国大会での優勝経験もある。
攻撃陣も迫力がある。1番重村健太、2番武拓人がチャンスメーカーに相応しい脚力で塁上を賑わせれば、昨年からレギュラーだった3、4番の水海翔太、植草祐太が“塁上の掃除”をきっちり行なうという具合に役割分担がしっかり整っているのが強みだ。
私が見た春の神奈川大会準々決勝、横浜隼人戦では1番重村が5打席2安打1四球1死球と出塁率8割を誇り、続く武は5打席2安打2犠打と2番の役割をきっちり果たしている。この打線と松井のピッチングのバランスのよさは全国クラスと比較しても遜色ない。